2017年12月2日土曜日

ユニクロvs.ZOZOTOWN 柳井社長が一番嫌いな言葉

 週刊文春に横田増生のユニクロ潜入記が掲載されたのは、1年前の12月1日発売号でのこと。2011年に著した『ユニクロ帝国の光と影』に対してユニクロが訴訟を起こし(結果は出版社側の勝訴)、その後に柳井社長がユニクロを批判する人には「どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」と発言したこともあって、アルバイトとしてユニクロに入り込んだのであった。

横田さんがZOZOTOWNについて記事を書いている!

 バレないよう名字を変えてまでの潜入取材に、そこまでするのか! と話題になり、敬意なのか何なのか「横田さん」とさん付けで呼ばれがちとなる。このルポは10回続き、先月、それをまとめた単行本『ユニクロ潜入一年』が刊行されている。

 今週の文春には、その横田さんによる「ZOZOSUITで追い込まれるユニクロの未来」が掲載。ファッション通販サイトZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが、プライベートブランド「ZOZO」の立ち上げに続いて、「ZOZOSUIT」を発表したのだ。

 これのどこがユニクロを追い込むのか。今週号の記事と、この裏にある『ユニクロ潜入一年』から解き明かしていく。

 ZOZOSUITは、着るだけで《身体の寸法を瞬時に採寸することのできる伸縮センサー内蔵の採寸ボディースーツ》(注)で、これにより試着が不要となるため、客は通販でも安心して購入ができるようになる。しかもこのスーツは無料で配布される。

 横田さんによれば、ユニクロも採寸に注力しており、潜入中の2016年にセミオーダーのメンズスーツを発売するが、採寸に失敗して返品となる事故が発生するなど、事業としてはうまくいっていないという。

柳井社長が一番嫌いな言葉

 またZOZOSUITの登場によって、「これまで柳井社長の号令一下、人海戦術で数々難題をクリアしてきたユニクロ」といえども、採寸による顧客データを先に他社に押さえられてしまうため、店舗での売上に影響しかねないと指摘する。

 ここで「人海戦術で数々難題をクリアしてきたユニクロ」と述べているのは、一見、組織力を評価しているかのようにも思えるが、実は横田さんは嫌味をいっているのである。

 なぜなら柳井社長が一番嫌いな言葉が「人海戦術」だからだ。

『ユニクロ潜入一年』にはこうある。「柳井社長が好きな言葉に〈少数精鋭〉というのがある。できるだけ少ない労働者で、店舗の運営を効率よく回し利益を上げていくことを意味している。嫌いな言葉は、〈人海戦術〉。多くの人件費が発生しながらも、仕事がはかどらない状態を指す」と。

 なお『ユニクロ潜入一年』によれば、少数精鋭とは裏腹の店舗で“人海戦術”の一員となった横田さんは、バイトをはじめて最初の2、3ヶ月で10キロも体重が落ちるのであった。

潜入者・横田さんならではの「懐疑」

 2015年の本決算発表の場で柳井社長は、「今後はEコマース事業を大幅に拡大していく」と述べる。またその具体化として、顧客情報の蓄積と、それによるリアル店舗とネット通販の融合で売上の最大化を狙う「有明プロジェクト」が発表される。

 これについて横田さんは、潜入先の幕張新都心店で店長から説明を受けている。店長はホワイトボードに「ゲームのルールが変わる」「ルールを我々が作る → 一人勝ち」「『未来を予測する最善の方法は、未来を作ることだ』byドラッカー」などと書き、将来、店舗がなくなるかもしれない不安もあるが、ユニクロが取り組まなければならないプロジェクトなのだと語る。時給のバイト相手に、ドラッカーの金言を披露するのは、「全員経営」を謳うユニクロならではなのかもしれない。

 それほどネット通販への転換を図ろうとするユニクロだが、横田さんは懐疑的だ。ネット通販においては、2004年に立ち上がったZOZOTOWNにくらべ「周回遅れの感は否めない」と。そこにきて、ZOZOSUITである。この、人によらない採寸での顧客情報の蓄積により、それこそ未来が作られようとしている。

 柳井社長の「どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」を横田さんは潜入の“招待状”として受け取ったが、今回の記事は取材拒否が続く柳井社長への質問状のようにもとれる。

(注)ZOZOSUIT特設ページより

(urbansea)

(c)共同通信社/文藝春秋

Let's block ads! (Why?)

Read Again http://news.nicovideo.jp/watch/nw3116914

0 件のコメント:

コメントを投稿