2018年7月5日木曜日

「全面禁煙化」から1カ月 串カツ田中が得たもの、失ったもの

 串カツ田中が6月1日に、立ち飲み形式の3店舗を除く全国の181店舗を全面禁煙化してからはや1カ月が経過した。家族連れの満足度向上、従業員の受動喫煙防止、新規顧客の獲得などが狙いで、かつては紫煙が立ち込めていた店内からたばこは消え、代わりに子どもたちの姿が見られるようになった。

【その他の画像】

 ただその半面、“行きづらくなった”と感じ、足が遠のいた喫煙者がいるのも事実だ。ブランドイメージの変革につながる一方で、大きな反動が伴う施策といえるが、この1カ月間で串カツ田中の客層や売り上げにはどんな変化があったのか。

 串カツ田中を運営する串カツ田中ホールディングス(HD)が7月5日に報告書を公表し、全面禁煙化で得た成果と課題点を明らかにした。

●来客数は伸びたが、客単価は低下

 串カツ田中HDによると、6月中の直営店(86店舗)の来客数は前年同月比2.2%増だった一方、客単価は5.0%減。売上高は2.9%減少した。

 客単価が減少した要因は禁煙化の周知を図るために実施した、串カツを全品108円(税込、以下同)に値下げする「感謝祭キャンペーン」や、ドリンク全品を216円均一とする「200店舗達成キャンペーン」などの顧客還元策によるものが大きいという。

●家族連れやカップルは増えたが、サラリーマンは減った

 客層の変化については、家族連れが前年同期から6%増、20代以下の男女グループが1%増、女性グループとカップルが1%増という結果に。一方、会社員の男性グループは6%減、30代以上の男女グループは1%減となった。

 串カツ田中HDによると、禁煙化によって子どもや未成年の来店が増えたため、アルコール類の注文が減ってソフトドリンクが増えたことも客単価が下がった要因だという。

 ただ同社は「増えた客層・減った客層が明確に分かったため、かえって年代別のアプローチ策を打ちやすくなった」(経営戦略部)と前向きな姿勢を見せる。具体的な販促策は現時点では未定だが、「今後も、未成年からお通し代を取ることはない」(同)という。

●“稼ぎ時”が変わった

 時間帯別では、かつてピークだった午後7時台と午後11時台の売り上げが午後8時台と午後10時台に分散するなど、早い時間帯の売上高が増加。その一方、深夜帯の売上高は減少したという。

 これに対しても「明確な結果が出て、施策の影響を確認できたことは一つの収穫。詳細は未定だが、売り上げが減った時間帯に対して的確なアプローチを取ることで課題を解決していきたい」(同)としている。

●近隣の路上で喫煙する客も

 だが、禁煙化の反動はこれだけではない。同社によると喫煙者が来店した際、店内でたばこを吸えないため近隣の路上などで喫煙し、ポイ捨てをするケースが増えたという。通行人が受動喫煙することが多くなり、近隣施設や地域住民から苦情が出ることもあるとのことだ。

 この問題はどう解決するのか、串カツ田中HDは「スタッフに清掃の回数を増やしてもらうなどの対応はすでに始めている。地域との関わり合いは当社にとって重要。地域の皆さまに気持ちよく利用してもらえるよう、マネジャーや従業員から意見を聞き、早急に対応策を立案したい」としている。

●客とスタッフからの意見は……?

 同社が公表した顧客からの声は、「禁煙になってうれしい」「安心して子どもを連れて来れる」「妊婦でも来れる」という意見がある一方、「禁煙になって残念」「もう来ない」「居酒屋でたばこが吸えないなんてありえない」という声も。賛否両論だったようだ。

 従業員からは「灰皿の片付けがなくなったので、ウェイティングの顧客を早く通せる」「回転率が上がった」「快適に働けるようになった」とオペレーション面の改善を評価する意見が出たとのこと。

 その一方で、「喫煙する常連客がいなくなり、残念だ」「禁煙と聞くと帰る顧客が1日4組程度いる」「席数が少ない店は取りこぼしが起きている」と“顧客離れ”を嘆く意見や、「居酒屋というよりも食事処としての利用が増え、提供スピードの速さが求められている」とオペレーションの変化を指摘する声も挙がったという。

 これを受けた串カツ田中HDの見解は、「禁煙になったことを知らずに来店し、入店をやめる顧客がいるため、禁煙化に対する認知度はまだまだ低い。変化の過渡期にあるため、禁煙化によって来店増加が見込める潜在層のターゲットも多い。これからの認知拡大で来客数はより増加していくだろう」とあくまで前向きだ。

●串カツを「日本を代表する文化」に

 串カツ田中HDに今後の展望を聞いたところ、「禁煙化は10~20年後を見据えた施策。禁煙化によって子ども達の来店が増えたが、彼らには青年になったら友達と一緒に、大人になったら家族と一緒に来てもらいたい。そしてゆくゆくは、串カツを日本を代表する文化にしたい」(経営戦略部)と意気込んだ。

 「短期的な成果だけを目的に、いったん禁煙化した店舗を分煙に戻したりすることはない」(同)という。

 居酒屋チェーンにしては珍しい「全面禁煙化」に踏み切った串カツ田中。この1カ月間では賛否両論の結果となったが、長期的な成果につなげて“串カツを文化に”との野望をかなえられるか。今後の展開に注目したい。

串カツ田中が禁煙化に踏み切ってから1カ月がたった

Let's block ads! (Why?)

Read Again http://news.nicovideo.jp/watch/nw3646570

0 件のコメント:

コメントを投稿