パナソニックが31日に発表した2018年4~9月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比4%減の1136億円だった。米テスラの電気自動車(EV)向けの電池工場で立ち上げ費用がかさんだうえ、主力の産業用機器や家電が苦戦した。強みの家電などで稼ぎ、伸びしろのある車載電池に資金を振り向ける成長シナリオに影がさしている。
営業利益は1%減の1952億円だった。事業別の内訳をみると自動車関連が26%減の290億円。テスラと共同運営する米ネバダ州の電池工場の生産量を増やすため、多数の技術者を張りつけているからだ。テスラは6月以降に新型車「モデル3」の生産を週約5千台に増やしており、対応コストがかさんでいる。
長期の成長を見込む車載電池のコスト増はいわば「成長痛」といえるが、気がかりなのは家電や産業用機器の減速だ。家電は白物を中心にアジアで他社の販売攻勢に見舞われているうえ、原材料も高騰。同事業の営業利益は17%減の617億円だ。米中貿易摩擦の影響で中国の投資意欲が減退し、好調だった産業用モーターやスマートフォン部品の需要が減った。
19年3月期通期の予想(連結営業利益は前期比12%増の4250億円)は据え置いたが、不安要素がのぞく。自動車関連は営業利益予想を期初より330億円、家電は130億円それぞれ引き下げた。自動車関連は米中摩擦の影響で一部製品が制裁関税の対象となり、家電は世界で競争が激化。「(双方とも)18年3月期に比べると増益」(梅田博和常務執行役員)だが、目減り分を不動産売却益で補う格好だ。
ライバルと目されるソニーは18年4~9月期の連結純利益(米国会計基準)が前年同期比89%増の3994億円。家庭用ゲーム機「プレイステーション4」を活用した有料会員サービスやソフトが好調だ。19年3月期通期の営業利益は前期比18%増の8700億円と2期連続の最高となる。
一方、パナソニックは1984年11月期に記録した営業最高益(5757億円)をまだ更新できていない。当時はVHSビデオが世界を席巻したが、今のパナソニックにはVHSビデオやソニーのプレステに当たるような商品が見当たらない。
津賀一宏社長は31日の会見で「現在の利益率は低く、大きなチャレンジをするための投資にキャッシュが回らない」と率直に語った。都内で開催中の創業100周年記念イベントで講演したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「世界で通用する代表的な製品を作らなければいけない」と注文をつけた。パナソニックの「顔」となる商品の育成が急務だ。(藤野逸郎)
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