東芝のメモリー事業売却交渉が混沌としてきた。6月に決めた優先交渉先の日米韓連合との協議が難航する中、米ウエスタンデジタル(WD)や米ファンドKKRとも再協議していたが、そこに米アップルを加えた日米韓連合などが巻き返しを狙って新提案を提示。東芝は売却先を決められないでいる。
東芝は31日午後、売却について産業革新機構、日本政策投資銀行、米投資会社ベインキャピタルなどの陣営、WDを含む企業連合、台湾の鴻海精密工業を含む企業連合の3陣営と交渉を継続していると発表した。売却が今期(2018年3月期)の財務体質強化につながるよう「可及的速やかに」契約締結を目指すとした。
東芝は米原発事業の失敗で陥った債務超過を穴埋めするため、4月に分社化して設立した東芝メモリの売却を急いでおり、2兆円程度の金額を見込んでいる。しかし、合弁相手のWDとの係争問題や、買収の仕組みを考案するアドバイザーや投資ファンドの思惑も絡む中、交渉がまとまらない状態が長期化している。
31日の取締役会に関連して発表文の中で東芝は、売却交渉についての報告や検討はあったが、開示すべき決定事項はなかったと説明している。同社は2月にメモリー事業の売却方針を決定したが、それから約半年が経過した。来年3月までに売却できなければ、2期連続の債務超過となり上場廃止基準に抵触する。
二転三転
これまでの取材によると、アップルはベイン、革新機構などの日米韓連合に合流する形となる。WDはKKRなどと連合を組んでいるが、鴻海がどの企業と連合体を形成しているかは分かっていない。革新機構と政投銀はWD陣営にも関与している。
東芝は6月下旬にいったん優先交渉先としてベインや革新機構などの日米韓連合を選んでいたが、WDが第三者への売却は合弁契約に違反するなどとして国際仲裁裁判所に売却の差し止めを求めて提訴。同連合はWDとの係争が解決するまで買収資金は支払えないとして協議が行き詰まった。そこにWD連合が合意できれば訴訟を取り下げる条件で再提案していた。
同関係者によると、協議が難航する中、所管官庁の経済産業省もWD陣営からの買収提案を受け入れるよう東芝に圧力を強めた。しかし、一部の東芝幹部や売却交渉のアドバイザーはWD陣営が示した直近の提案内容に反発。東芝メモリや親会社である東芝自体の利益を守れないとして難色を示していたもようだ。
売却の意思に疑問も
こうした中で30日には、ベインがアップルと組み、東芝に新たな買収提案を示してきたことが関係者への取材で分かった。「iPhone(アイフォーン)や「iPad(アイパッド)」といった製品に東芝製フラッシュメモリーを使用しており、韓国サムスン電子からの供給に過度に依存するのを避け東芝からの安定的な調達を維持したい考えだという。
エース経済研究所の安田秀樹アナリストは、「独占禁止法審査などを考慮すると9月中には売却先を決める必要がある」との認識を示し、売却先候補が増えたことで「東芝から売却したいと感じない」と述べた。その上で、仮に上場が維持できなくても会社は存続は可能だと指摘した。
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