中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社は12月17日、建設中の複合商業施設「Flight of Dreams(フライト・オブ・ドリームス)」の敷地内に、目玉となるボーイング787-8型機の飛行試験初号機「ZA001」(登録番号N787BA)を駐機場から移動させた。787クラスの機体が空港の制限エリア外へ移動し、昼間に道路を横断するのは日本初。2018年8月のオープンに向け、建設を進めていく。
—記事の概要—
・ANAとJALがスポンサー
・最初に製造された787
ANAとJALがスポンサー
Flight of Dreamsは、中部空港会社が整備を進めているLCC用新ターミナルビルと、愛知県が建設を予定するコンベンションセンターとの間にある、開港以来更地となっている敷地に建設中。建物は地上4階建てで高さ24メートル、建築面積は6500平方メートル、延床面積は1万1000平方メートルとなる。
1階と4階が機体をはじめ、製造工程や飛行機が飛ぶ仕組みなどを学べる展示エリアとし、2階と3階をフードコートなどが入居する商業施設にする。展示エリアへの入場は有料となる。
展示エリアのスポンサーとして、787を運航する全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)の2社が参画。体験型コンテンツ10カ所のうち、2カ所ずつスポンサーを務める。
ANAは、実機と空間全体を使ったプロジェクションマッピング「超体感演出」と、来場者が描いた飛行機をコンピューターで読み込み、空間を飛んでいるように見せる「お絵かき飛行機」のスポンサー。JALは、紙飛行機を光の空間に飛ばし、飛ぶ仕組みへの理解を深めるコンテンツ「紙ヒコーキを飛ばす」と、パイロットや客室乗務員、整備士などの仕事を体験できる「お仕事体験」を提供する。
商業エリアには、米シアトルで展開するレストランバー「THE PIKE BREWING(パイクブリューイング)」とスターバックスコーヒーが入居。また、ボーイングのグッズショップ「ボーイングストア」を、米国外では初めて常設する。
最初に製造された787
ZA001は現地時間2009年12月15日、エバレット工場に隣接するペインフィールド空港で初飛行に成功。その後は2011年までさまざまな飛行試験に使用され、試験終了後はカリフォルニアの砂漠に留置されていた。2015年6月22日にシアトルからセントレアへ到着し、同年7月7日にボーイングから中部空港会社へ贈られた。
ボーイングは787の飛行試験機を6機製造。飛行試験機の初号機であるZA001は、787の中で最初に製造された機体で、民間航空機の歴史に残る機体が、生まれ故郷とも言える中部地方へ里帰りした。
中部空港会社の友添雅直社長は、「若い人や空に夢を持たれている人が、ここに来て楽しめる施設にしたい」と抱負を述べた。
「8月のオープン向け、2月に外壁、4月には内装工事を終える」(友添社長)と、今後の計画を説明。17日にZA001の大移動を実施した理由について、「クリスマスの混雑も考え、施設や臨時駐車場の整備の関係で、ギリギリの線を考えた」と語った。
ボーイング・ジャパンのブレット・ゲリー社長は、「787の最初の翼も、セントレアから飛び立った」とあいさつ。2007年に、初めて787の主翼が747-400を改造した大型輸送機「ドリームリフター」によって中部から運ばれたことに触れ、ZA001が里帰りする地として、中部がふさわしいことを強調した。
787が道路横断
「大勢の方に来ていただきたかったが、3500人で打ち止めさせていただいた」。ZA001の大移動を間近で見られる人数を、会場の収容量の関係で制限せざるを得なかったことを、友添社長は残念がった。
大移動の会場に入場できた中部空港近くに住む男性は、普段から飛行機の写真を撮りによく訪れるという。「Facebookでたまたま見つけて、即応募しました。翌朝には応募が締め切られていました」と、即断即決が功を奏したという。「ZA001が到着した日は、仕事で中部に来られませんでした。オープンしたら見に来たいですね」と、期待を寄せた。
午前11時40分ごろから始まったZA001の大移動は、ANA中部空港の松永悟さんがトーイングカーを運転し、時速約3キロのゆっくりした速度で、制限エリア内の駐機場からエリア外の臨時駐車場に出て、空港内の道路を横断してFlight of Dreamsの敷地内に入った。移動距離は、約900メートル。翼端と建物との間が約70センチほどしか隙間がなく、高いトーイング技術が求められた。
松永さんは、トーイング歴約15年のベテラン。ZA001は、保管時にタイヤのローテーションが必要なため、45日周期で空港内を移動していた。この時も松永さんが担当していたという。大移動のトーイングを任されたのは約1カ月前。「選ばれて非常にうれしかったです」と笑顔を見せた。
慎重さを求められたトーイングの自己採点は、「満点です!」と即答。「風も強かったので、確認しながら進めました。建屋に機体を入れるため、翼端や地面の段差に気を遣いました」と、ZA001最後のトーイングを無事終え、安堵(あんど)していた。
関連リンク
Flight of Dreams
中部国際空港 セントレア
全日本空輸
Flight of Dreams
・中部787展示施設、スポンサーにANAとJAL 18年夏開業「Flight of Dreams」(17年12月4日)
・セントレア、787展示施設の起工式 18年夏開業へ(17年4月27日)
・セントレア、ペインフィールド空港と提携 787日米ゆかりの地(17年4月15日)
・中部の787展示施設、シアトルのビールレストラン出店 スタバも(17年1月27日)
・セントレアの787展示施設、18年夏開業へ 米国外初のボーイングストア常設(16年11月9日)
・セントレアの787初号機ZA001、17年度に展示へ 商業施設を整備(16年3月31日)
ZA001
・787初号機ZA001、セントレアで贈呈式 公開時期は未定(15年7月7日)
・歴史的な787初号機、セントレアで余生 写真特集・ZA001中部到着(15年6月23日)
・787初号機ZA001、セントレア到着 故郷へ里帰り(15年6月22日)
・787試験初号機、シアトル出発 セントレアへ(15年6月22日)
・ボーイング、中部空港に787試験初号機寄贈へ(15年6月17日)
・ボーイング、787試験機を寄贈 アリゾナの航空博物館へ(15年4月20日)
・ボーイング、787を航空博物館へ寄贈 シアトル(14年11月9日)
あいち航空ミュージアム
・あいち航空ミュージアムがオープン YS-11や零戦展示、初日はMRJ駐機(17年11月30日)
・YS-11最後のVIP輸送機 写真特集・あいち航空ミュージアム空自52-1152(17年12月4日)
MRJミュージアム
・MRJミュージアム開館 最終組立見学も(17年12月1日)
・三菱重工、MRJミュージアム公開 6機目のMRJも製造中(17年11月21日)
ANAの787-8
・ANAの787初号機、通常塗装で登場 初の再塗装機(17年2月28日)
・中距離国際線機で完納 写真特集・ANAの787-8、36機揃う(16年5月18日)
・ANA、787-8全機揃う 4年7カ月かけ、36機目が羽田着(16年5月15日)
JALの787-8
・JAL、国内線に787-8初導入 19年から羽田-伊丹、4機追加発注(17年9月21日)
・操縦席も「おしぼり乾きにくい」写真特集・JALの787-8、全機揃う(16年7月6日)
・JAL、787-8全機受領 25機目が成田着、チャールストン製(16年7月2日)
0 件のコメント:
コメントを投稿