2018年3月28日水曜日

商業地に3年ぶり上昇地点 長野県の18年公示地価

 国土交通省が27日発表した2018年の公示地価(1月1日時点)によると、長野県内の商業地のうち5カ所で地価が上昇した。商業地で上昇地点が出るのは3年ぶり。長野市や松本市などの市街地で地価の下げ止まり傾向が一段と鮮明になりつつある。製造業を中心とした景気回復が地価に波及する動きが強まり始めた。

■都市部で上昇目立つ

 商業地の平均変動率はマイナス1.0%と前年に比べ下落率を0.5ポイント縮めた。下落率は地価が下落に転じた1993年以降で最も小さい。

 商業地の継続調査地点112地点のうち最も上昇率が高かったのが松本市の「サイゼリヤ松本中央店」の3.1%。17年9月に開業したイオンモール松本に隣接しており人通りも多い地点だ。開業前後から不動産取引が増えているという。

 次いで上昇したのが長野市の長野駅東口「アーバンタワー長野」の3.0%。再開発が一段落したことで人通りが増えた影響が出ている。

イオンモール松本(右奥)近くのサイゼリヤ松本中央店が県内商業地で最も上昇率が高い

イオンモール松本(右奥)近くのサイゼリヤ松本中央店が県内商業地で最も上昇率が高い

 商業地で上昇地点が出たのは長野市で11年ぶり、佐久市では24年ぶり、松本市では26年ぶり。長野市の商業地全体の平均変動率は前年比0.3ポイント高い0.1%と、26年ぶりにプラスへ転じた。製造業を中心とした県内の景気回復傾向が強まるにつれ、地価上昇が住宅地に比べ遅れていた商業地にも上昇が及ぶ。

 県内商業地で地価が最も高いのは6年連続で長野駅前の「浪やビル」で、1平方メートルあたり35万6000円だった。

■住宅地が先行

 地価の下落率縮小で先行してきた住宅地の継続調査地点210地点の平均変動率はマイナス0.5%と、下落率は前年比0.3ポイント縮小。上昇は47地点と前年より10地点増えた。上昇が目立つのが首都圏からの別荘需要が強い軽井沢町だ。同町は住宅地の調査地点6カ所全てで地価が上昇した。

 最も上昇率が高いのが別荘地の中でも周辺部にある風越公園南地域の5.2%。1平方メートルあたり1万4200円と軽井沢の別荘地では地価が安い地域。長く続く景気回復に伴いこうした周辺部にも需要が強まってきた。

 上昇地点数は長野市で18地点と前年比6地点増え、松本市でも1地点多い18地点。塩尻市や安曇野市でも上昇地点が出るなど、利便性の高い都市部で上昇が続く。

 長野市の平均変動率は前年比0.4ポイント上昇し21年ぶりに横ばいへ転じた。安曇野市は0.2ポイント高い0.2%のプラスで、合併後で初めて上昇に転じた。

■工場地が横ばいに

 製造業の好調に伴う設備投資や工場新設の動きを受け、工業地の地価も下げ止まりの傾向が強まる。全8地点の平均変動率は0.3ポイント上昇し21年ぶりに横ばいとなった。

 全用途の平均下落率は0.7%下落と前年から0.3ポイント縮小。下落率は21年ぶりに小幅な水準まで縮んだ。不動産鑑定士の茅野武弘氏は「大都市部で利便性が高い地点は地価が下げ止まりつつある」と話す。

■中山間地は下落続く

 長野県内では都市部で地価の下げ止まり傾向が目立つ一方、地方部では地価下落が続く。住宅地・商業地ともに最も下落率が高い地点があるのは上松町だ。住宅地は3.7%、商業地は3.9%それぞれ下落した。

 市町村別の平均変動率をみても、下落率上位には木曽町、辰野町、中川村など中山間地が並ぶ。地価下げ止まりの流れは広い県土の地方部まではまだ波及していない。

 一方でスキー客に人気で外国人による取引が増えている野沢温泉村は住宅地の平均下落率が1.2%と前年に比べ2.5ポイント縮小。白馬村も下落率は0.5%と0.4ポイント改善したが、こうした場所を除けば地方に下げ止まりの兆しはみられない。

 長野市など大都市部のなかでも二極化が鮮明だ。豊野や松代など合併によって長野市になった周辺部の地域は下落が続く。隣接する千曲市でも上山田温泉周辺地域が下落率上位になるなど、需要が強い所と弱い所の格差が広がりつつある。

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