商工中金は27日開いた臨時株主総会で、安達健祐社長(65)が退任し、後任に元プリンスホテル常務執行役員の関根正裕氏(60)が就く人事を決めた。国の制度融資「危機対応業務」などを巡る一連の不正を受け、民間トップを登用して抜本的な経営改革を図る。商工中金では26日にも新たに577件の不正が発覚したばかりで、組織風土を変えられるかが問われる。
商工中金トップは、過去2代続けて経済産業省事務次官が天下っていた。民間出身社長は、商工中金が株式会社化した2008年10月以降では2人目。同社は6月までに取締役の過半を社外取締役にする企業統治改革も進める。この日就任した関根氏は記者会見で「前例にとらわれず、現場主義の視点で改革を実行し、信頼回復できるよう全力を挙げて取り組む」と表明し、「まずコンプライアンス(法令順守)の体制をしっかり構築したい」と力を込めた。
関根氏が今後取り組むのは事業構造の抜本的な転換だ。経産省の有識者検討会は1月、17年3月末時点で貸出残高の約3割を占める危機対応業務を将来的に3%まで縮小し、中小企業の再生支援を拡大するよう求めた。民間金融機関の支援が行き届かない分野に注力し、低利の制度融資に頼る姿勢から脱却する狙いがある。
だが事業再生は高度なノウハウや人材が必要になる。関根氏は「ここ数年は危機対応業務が優先になっていたが本来は能力を持っている」との認識を示す。ただ「民間でも難しい事業再生について、不正制度融資で安易に貸し出しを増やしてきた組織が本当にできるか疑問」(金融関係者)との声は根強い。職員の意識改革についても、危機対応業務の不正は民間出身社長の関哲夫氏(在任08~13年)時代に始まっており、関根氏が民間で培ったノウハウがどこまで通用するかも未知数だ。
経産省は27日、商工中金の経営を監視する評価委員会(委員長・川村雄介大和総研副理事長)を設置し、新たな事業モデルの構築や経営管理態勢の強化が進んでいるか検証することを明らかにした。同委員会は4年後に完全民営化の可否を提言する予定で、改革の成否は組織のあり方も左右する。世耕弘成経産相は27日の閣議後記者会見で「社長が改革の先頭に立ち全力で取り組んでほしい」と述べた。【小原擁、片平知宏】
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