2018年3月28日水曜日

iPad Proとは何が違う? 「新しいiPad」ファーストインプレッション (1/2)

 Appleは、3月27日(現地時間)に、教育向けの各種施策を発表した。そこで発表されたデバイスが、Apple Pencilに対応した9.7型の「iPad」だ。プロセッサに「A10 Fusion」を採用しており、AR対応のアプリも快適に動かせるのが特徴。iPad Proほどではないが十分なパフォーマンスを持ち、Apple Pencilに対応しながら、3万7800円(税別)からと従来の廉価版iPadから価格を据え置いている。ここでは、その実機を写真とともに見ていきたい。

iPadApple Pencilに対応した9.7型の「iPad」

 Apple Pencilに対応したiPadだが、デザインのベースになっているのは、9.7型のiPadだ。10.5型の「iPad Pro」のように、ディスプレイ周りのベゼルが細くなっているわけではなく、伝統的なiPadの見た目を踏襲している。本体の背面には金属が採用されており、右側面にボリュームキーを備える。今回借りているのは、Wi-Fi+Cellular版なので、SIMカードスロットも右側面下部に搭載されている。

iPadデザイン的には、従来型の9.7型iPadを踏襲しているため、左右のベゼルはある程度目立つ
iPad厚さは7.5mm。右側面にボリュームキーとSIMカードスロットを配置する
iPad
iPad試用した実機はシルバー

 2017年、10.5型のiPad Proが登場するまで、ラインアップには9.7型のiPad Proも存在していたが、それともデザインは異なる。例えば、Wi-Fi+Cellular版の背面上部にあるアンテナは、iPad Proだと細い線だけだったのに対し、新しいiPadは上部の一部が黒いパーツで占められている。Apple SIMの扱いも異なり、iPad Proは内蔵だったのに対し、新iPadはSIMカードスロットにApple SIMを挿入しなければならない。7.5mmと厚みもある。

iPadWi-Fi+Cellular版では、iPad Proとの違いが明確に出ており、アンテナ部分が目立つデザインになっている

 また、ディスプレイもTrue ToneやP3の色域に非対応だ。センサーや液晶パネルも、iPad Proよりグレードは下がっている。スピーカーはステレオだが、底面にのみ搭載される形で、カメラも800万画素だ。ディスプレイサイズこそ9.7型版のiPadと同じだが、旧来からあったiPadをApple Pencilに対応させ、スペックアップを図ったのが、新しいiPadといっていいだろう。

 その差は価格に如実に表れており、冒頭述べたように、Wi-Fi版の32GBモデルは3万7800円と、Apple Pencil対応iPadの中では最安となる。Apple Pencilは使いたいが、iPad Proの価格にはどうしても二の足を踏んでいたユーザーには、待ちに待った端末といえるかもしれない。各ユーザーの使い方に依存するところはあるが、筆者はタブレットであまり写真を撮らないため、画素数が上がっていないことより、むしろ背面がフラットになっていることの方がうれしかったりもする。

iPadカメラが本体から飛び出しておらず、フラットでスマートだ

 低価格を打ち出したiPadとはいえ、部分的には9.7型のiPad Proを超えているところもある。プロセッサがそれだ。新iPadにはA10 Fusionが採用されており、2017年に発売された9.7型のiPadよりも、CPUで40%、GPUで50%の性能アップが図られている。パフォーマンスが高いゆえに、AR対応アプリもきちんと動き、それを教育に生かせるというのがAppleの描くシナリオだ。

 実際、いくつかアプリを起動してみたが、動作速度は十分。普段、ディスプレイが120Hz駆動のiPad Proを使っているためか、やや滑らかさに欠けると思えたところはあるが、ストレスを感じるほどではない。価格差を考えると、これで十分だと思えてくる。ベンチマークアプリの結果も、パフォーマンスの高さを物語る。「Geekbench 4」で測定したCPUスコアは、シングルコアが3435、マルチコアが5908となった。

iPad
iPadGeekbench 4で測定したスコア。メモリは2GB搭載されているようだ

 マルチコアのスコアこそ10.5型のiPad Proにはかなわないが、シングルコアスコアは匹敵するレベルといえる。「Metal」のスコアは1万3355点。3万点に迫る10.5型のiPad Proには及ばないものの、こちらも「A9X」を採用した初代iPad Proに近い数値だ。iPadという名称ではあるが、Apple Pencilに対応しているところや、CPUとGPUの性能は、iPad Proシリーズを名乗ってもいいほどのレベルになっている。

 ベンチマークはあくまでパフォーマンスを示す指標の1つでしかないが、コストパフォーマンスは高い。ちなみに、Geekbenchが示した情報によると、メモリ(RAM)は2GB搭載されているようだ。

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 Apple Pencilの書き味はどうか。iPad Proとの違いで体感に影響を与えそうなのはディスプレイのリフレッシュレートの違いぐらいだが、文字をスピーディーに書いても大きな違いは感じられなかった。つまり、iPad Proと同等のレベルでApple Pencilを使えるということだ。

iPadApple Pencilの書き味は健在。この価格で、滑らかな手書きができるのはうれしい

 メモアプリがApple Pencilの入力に対応しているのはもちろん、ロック画面から即座にメモを立ち上げる「インスタントメモ」にも対応している。もちろん、サードパーティー製のアプリもApple Pencilに対応する。Lightning端子に挿すだけで簡単にペアリングできるという点も、従来のiPad Proと同じだ。

iPadロック画面をApple Pencilでタップすると、即座にメモを起動できる
iPad多数のサードパーティー製アプリが対応しているのも、Apple Pencilのメリットだ。画面は「GoodNotes」
iPadLogitech製の「クレヨン」が対応するのは、このiPadだけだという。価格はApple Pencilの半額ほどで、Bluetooth接続しないで利用するため、筆圧の検知ができない

 一方で、iPad Proとの大きな違いは、Smart Keyboardが装着できない点にある。Smart Keyboardはコネクターに挿すだけですぐに使い始めることができ、充電も不要なので手軽だ。Bluetoothキーボードで代替はできるが、PCのように使おうとしている人にとっては、ネックになるかもしれない。iPad Proとの差がなくなってしまい、売れ行きが新iPadに偏ってしまう恐れはあるが、教育現場でもキーボードを使うケースは多いと思われる。これについては、今後の課題といえるだろう。

 発表会では教育用をアピールしていた新しいiPadだが、実際に使ってみると、より用途は広いように思えた。Smart Keyboardがないのは残念だが、それ以外は機能の取捨選択がうまいというのが、率直な印象だ。むしろ、名前からもバリバリの「プロ用」を打ち出しているiPad Proよりも、ターゲット層が広く、タブレットの売れ筋になる可能性はある。Apple Pencilをまず試してみたいという人にも、うってつけの端末になりそうだ。

取材協力:アップルジャパン

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