2018年3月27日火曜日

公示地価、四国4県平均下落率縮小 上昇 中心部周辺に広がり

 国土交通省が27日発表した公示地価(2018年1月1日時点)で四国4県は、住宅地が前年比0.7%、商業地が同0.9%それぞれ低下した。人口減により全体では下落が続くが、下落率は縮小しており、県庁所在市を中心に地価の上昇地点も大幅に増えた。長年の下落で値ごろ感があるうえ、低金利や訪日客の増加といった環境が土地需要を拡大させている。

市中心部の商店街に共立メンテナンスが昨年開業したホテル(松山市)

市中心部の商店街に共立メンテナンスが昨年開業したホテル(松山市)

 上昇したのは住宅地の66地点、商業地の34地点。香川県では高松市全体の地価が27年ぶりに上昇した。住宅地が0.2%、商業地が0.5%上がった。最高価格地点の磨屋町は4.1%上昇し、県内で最も変動率が高かった。不動産鑑定士の鈴木祐司氏は「訪日客が増加し、ホテル需要への期待が地価を押し上げている」と分析する。

 徳島県では徳島市と松茂町、北島町、藍住町の4市町で全用途の平均変動率がプラスとなった。徳島市の上昇は26年ぶりで、松茂町は19年ぶり。県内の上昇地点は33地点と前年より10増えた。

 愛媛県は住宅地14地点、商業地12地点が上昇した。松山市では商業地の変動率が0.2%上がり、10年ぶりの上昇となった。同市のほか、今治市と新居浜市でも上昇地点がみられた。

 高知県は前年の上昇地点なしから住宅地、商業地それぞれで2地点が上昇した。いずれも高知市内だった。商業地の1地点は付近に複合図書館「オーテピア」やホテル建設などが相次いでいる帯屋町アーケードの一角で地価は0.4%上昇。価格も県内で最高だった。住宅地では南海トラフ地震による津波浸水区域外で市中心部に近い地点などで上昇がみられた。

 4県ともにこれまで県庁所在市の中心部など一部地域に限られていた値上がりが周辺にも広がり始めた。ただ、人口減が深刻化する中、全国平均(住宅地0.3%上昇、商業地1.9%上昇)に比べると回復遅れが目立った。

■中心部ホテル相次ぐ

 高松市中心部に位置し、市内で最も人通りが多いエリアの丸亀町商店街。2001年から再開発が始まり、既存の町営駐車場や医療施設を併設したマンションの建設など新たな再開発計画もある。最近では17年にドラッグストアが新規出店したほか、16日に雑貨店がオープンするなど足元の投資も活発だ。

 「ここ数年、外国人観光客や地元の買い物客など商店街で滞留する人が増えている」。同商店街振興組合の担当者は近年の人通りの回復や購買意欲の高まりを実感する。商店街に隣接する磨屋町では地価が4.1%上がった。市内では高松駅前や中心部の大通り沿いでもホテルの建設が進む。

 18年の公示地価では四国4県とも県庁所在市を中心に商業地の上昇が相次いだ。低金利の環境下に加え、外国人観光客の増加やコンパクトシティーの推進による市街地への居住回帰が土地需要を後押しする。高松、徳島、松山の3市で、市全体の商業地の価格が上昇したほか、17年は上昇地点がなかった高知市でも上昇地点が出た。

 愛媛県でも松山市中心部でホテルやマンションの建設が目立つ。不動産鑑定士の大西泰祐氏は「訪日客の増加でホテルの高稼働が続いている」と指摘する。

 17年12月には共立メンテナンスが松山市の大街道商店街に面した場所にホテルをオープン。グループで農畜産業を手掛けるたいよう農園(愛媛県西予市)も18年12月には飲食店街にホテルを開く。

 高知県では高知市中心部の帯屋町周辺で複合図書館「オーテピア」やホテルの建設が続いた。市街地に近い卸団地でも訪日客向けのドラッグストアなどの新規出店が増え、地価も上がった。

 繁華街や商店街周辺でホテルの建設が相次ぐ一方、低金利や住宅ローン減税の継続を背景に市街地の住宅地へのマンション建設も活発化している。不動産鑑定士の大西氏は「郊外に住む高齢者世帯が利便性の高い市街地のマンションに住み替える動きもある」と話す。

 4県でも住宅地の回復が顕著だったのは徳島県だ。徳島市のほか、同市へのアクセスがいい石井、松茂、北島、藍住の1市4町で住宅地の平均変動率が上昇。大手企業が本社や製造拠点を構える鳴門市や阿南市でも上昇地点があった。

 高松市では中心部の人気エリアや、郊外の新興住宅地で上昇地点が相次いだ。地価に加え、建設費なども高騰しているが「物件の購買意欲は旺盛だ」(穴吹興産)。

 愛媛では松山市岩崎町が前年の5.1%の上昇を上回る6.5%の伸びを記録。高知市の帯屋町商店街などに近い中心部でもシニア向けを中心としたマンション開発が増えた。4県とも島しょ部や山間部、沿岸部の津波浸水区域などでは下落が続くものの、市街地や郊外でも利便性の高いエリアでは回復傾向が鮮明になっている。

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