――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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たばこ銘柄が前触れもなく急落したのは、従来事業よりシリコンバレー的なテクノロジーを投資家に売り込みたがる企業への警鐘だ。
米たばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナルの株価は19日に16%安となり、アルトリア・グループからスピンオフ(分離・独立)した2008年以降で最大の下げを記録した。同社は1-3月期決算発表で新商品の加熱式たばこについて、試金石となる日本での販売が予想を下回る伸びにとどまっていることを明らかにした。たばこ他社はフィリップ・モリスほど加熱式たばこに将来を託してはいないものの、株価は軒並み下落した。
たばこ会社は投資家の間で、主力製品の販売減少を切り抜けてきた低リスク銘柄との定評がある。メーカー各社は長年にわたり、販売本数の緩やかな減少を値上げやコスト削減で埋め合わせることができている。
だが、そうした手法は過去2年で劇的に変化した。米国外で「マールボロ」を販売するフィリップ・モリスが、加熱式たばこ「iQOS(アイコス)」に多額を投資したためだ。同社によると、アイコスは新型の紙巻きたばこを装置に詰めて吸う仕組みで、煙のないたばこを吸う感覚だ。アイコス専用端末は、「iPhone(アイフォーン)」のように充電器と共につやのある白い箱に入れて売られている。日本での売れ行きは極めて好調だったが、より年齢層が高い長年の愛煙家を取り込もうとする中、1-3月期は販売の伸びが鈍化した。
一見するとささいな情報が同社株にこれほど大きく影響したことは、この新技術が投資理由に占める比重の大きさを示唆している。仮に4-6月期に販売が加速すれば、株価は急騰するかもしれない。いずれにせよ、過去には「ベータ(β)値」が極めて低かった、つまり市場全般に比べ値動きがはるかに小さかった株式で、ボラティリティー(変動)が新たな常態になる可能性がある。
オールドエコノミーに属する他の旧来型企業も、さかんにテクノロジーについて語ってきた。時価総額で テスラ に抜かれた米自動車大手 ゼネラル・モーターズ (GM)は昨夏、自動運転車の開発を巡る強気な手掛かりを発信し始めた。株価はにわかに3割ほど跳ね上がったが、その後は上げ幅を縮小している。米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズの自動運転車が起こした事故も影を落とした。
テクノロジーが先導する市場では、20世紀型の大企業は未来的な装置の開発を通した自己改革に誘惑を感じるものだ。おそらくそれは必要なことでもあるだろう。投資家が知っておく必要があるのは、消費者への普及をあてこむ投資には、新しいリスクがつきものだということだ。
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