ヤマトホールディングス(HD)傘下で宅配最大手のヤマト運輸は24日、ディー・エヌ・エー(DeNA)と手がける省人化配送サービスの自動運転走行を神奈川県藤沢市で実験した。技術的には無人運転の実用化が確かめられつつある。ヤマトは「宅配車の無人化」を単なる人手不足対策にせず、新たなサービス創出も見据える。
ヤマトとDeNAは2017年4月から藤沢市で省人化配送サービス実験「ロボネコヤマト」に取り組んできた。利用者はスマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)で時間と場所を指定して宅配車両を呼び出し、到着後車内のロッカー状ボックスを解錠し荷物を取り出す。
これまでの実験はすべて有人で、運転手は荷の受け渡しには携わらないが、運転はしていた。24日は藤沢市内の一般車両も走る公道で、運転手がハンドルに触れずに走行させた。また一般車を入れずに封鎖した公道では、運転手が乗車しない無人運転も実施。利用者が受ける印象が有人運転とどう違うかや、運用の改善点など探った。
自動運転で完成がみえたロボネコヤマトでヤマトが取り組むのはまず人手不足対策だ。
宅配業界ではインターネット通販の急拡大も背景に届け先の不在に伴う再配達が増え、長時間労働や人手不足に拍車をかけている。消費者が自ら受取時間・場所を指定するロボネコを採用したところ、3月末までの約1年間で不在率はわずか0.53%にとどまった。再配達が減れば、配達員の負担も減る。
ヤマトの宅配は最適な配送ルートを頭の中で組み立てて車を操り、集配先の個人や企業に対する営業力も備えた熟練の運転手に依存している。ロボネコが実用化すれば、負担が減った運転手に採算性の高い地域や事業分野に回ってもらうこともできる。
人手不足解消にメドがたった後に見据えるのがロボネコを「新たなサービスを載せられるプラットフォーム」(ヤマトの畠山和生設備管理部長)に位置づけることだ。
実験では宅配便の受け取りのほか、藤沢市内の店舗の商品を注文できる「買い物代行」をしている。生活必需品を扱うスーパーやドラッグストアのほか、地元で人気の飲食店やベーカリーなどの「お取り寄せ」も手がける。
当初想定していた高齢者の利用は少ない一方で、「受け取りが簡単」などの理由から30~40代の女性の人気を集めているという。「買い物難民が少ない都市部でも実はニーズがあった」(ヤマトの畠山氏)と新たな需要の発見につながった。
宅配業務が未経験の専業主婦や高齢者といった住民にロボネコを使った配達を担ってもらうことも検討する。高齢者の安否確認などにも活用できれば住民間の交流を促し地域活性化につながる。
運転手分のスペースの有効活用で新たな商機も生まれる。藤沢市内の環境配慮型住宅地では他の運送会社の荷物も一緒に運ぶ共同配送に取り組む。宮崎県では2月から日本郵便と路線バスを使って共同配送を始めた。規制緩和が必要な場合もあるが、貨物と旅客を一緒に運ぶ「貨客混載」もありえる。
ヤマトはDeNAとともに実証実験の成果を5月末までに検証。今後の継続や具体的な実用化について検討を急ぐ。
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