[大阪市 25日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は25日、大阪市で講演し、金融政策は「効果と副作用の両方をバランスよく考慮していく必要がある状況になってきている」と述べた。デフレ克服が見通せなかった時と比べて経済・物価情勢が変化し、併せて金融政策運営も変わりつつあるとの見方を示した。大阪経済4団体共催の懇談会で述べた。
総裁は、景気が回復局面にあっても、物価が思うように伸びない現状を「やや複雑な経済・物価情勢」と表現。そうした環境の下では「金融政策もまた、さまざまな情勢を総合的に勘案して運営していくことが適当」と語った。
一方で、デフレからの脱却が見通せなかった時期は「大規模な政策を思い切って実施する必要があり、取るべき政策とその考え方はシンプルで明確だった」と振り返り、現在との違いを際立たせた。
日銀は、金融政策を取り巻く情勢が変化したことなども踏まえ、7月30、31日の金融政策決定会合で、金融緩和の副作用に対応するための措置を打ち出した。
同会合で導入を決めた政策金利に関するフォワードガイダンスは、低金利を「当分の間」続けると明記したが、総裁は講演で「特定の期間を念頭に置いたものではない」と重ねて表明。一方、「いつまでもという訳ではない」とも述べ、適切なタイミングで低金利政策を終える意向を示した。
長期金利の変動容認幅を広げた後の市場動向は「総じて落ち着いている」と分析し、「私どもの政策意図は、市場参加者に誤解なく受け止められたと理解している」と語った。
黒田総裁はまた、懇談会後の記者会見も含め、物価2%の実現に向けた意欲をにじませた。物価目標が未達な中で「金融政策を変えることはない」とし、金融緩和を縮小する正常化プロセスは、あくまで物価目標の達成後であることを強調した。
経済を巡るリスク要因では、米中間の貿易摩擦を挙げ、「貿易戦争は看過できない問題」と指摘した。現段階で、貿易全体への影響は限定的とみられるが「金融市場の動揺や企業心理の悪化を通じて、影響が増幅するリスクは注視していく」との考えを示した。
梅川崇
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