森記念財団・都市戦略研究所が3日発表した「日本の都市特性評価(東京23区)」によると、トップ3を千代田・港・中央の都心3区が占めた。経済・ビジネス分野で上位を独占したほか、生活・居住分野でも高スコアを獲得。都心回帰が鮮明になった。世田谷など高級住宅街が多い「西」が振るわない半面、江東や墨田など「東」が健闘する構図も浮かび上がった。
調査は統計資料やアンケートを基に分析した。(1)経済・ビジネス(2)研究・開発(3)文化・交流(4)生活・居住(5)環境(6)交通・アクセス――の6分野で計83指標を選定。26の指標グループごとにスコアを出し、順位をつけた。
首位は企業の本社機能が集まる千代田区。「経済規模」や「ビジネスの活力」といった指標で評価する経済・ビジネス分野で他区を引き離した。「育児・教育」や「市民生活・福祉」などで評価する生活・居住分野でも2位。子どもの医療費支援や教育費などで高評価を得た。
この傾向は2位の港区や3位の中央区でも同様だ。中央区は生活・居住と交通・アクセスの2分野で首位。コンビニや飲食店の密度のほか、保育所や地域包括支援センターの多さ、公共交通の利便性が高評価を得た。中央区の人口は90年代に7万人まで落ち込んだが、今年5月には16万人を突破。都心回帰の動きが最も鮮明に表れている。
4~10位の上位グループには新宿や渋谷、文京や台東など都心に近い区が入った。商業地や観光地の集積を映し、経済・ビジネス分野や文化・交流分野で高スコアを獲得した区が目立った。
例えば、5位の渋谷区は新規事業所の割合などで評価する「ビジネスの活力」の指標で評価が高かった。渋谷駅周辺では東急グループが複数の大型再開発を計画。一連の開発で新規供給するオフィスの延べ床面積は27万平方メートルに達する。
渋谷区や4位の新宿区、7位の台東区は「休日の人の多さ」や「行楽・観光目的の訪問の多さ」などで評価する文化・交流分野でスコアが高かった。渋谷や歌舞伎町、浅草など訪日外国人に人気の観光スポットがある強みが出ている。東京大学を擁する文京区は研究・開発分野で首位だった。
23区をエリアごとにみると、臨海部でタワーマンションの建設が相次ぐ中央区や江東区(10位)、台東区や墨田区(11位)など「東」の健闘ぶりが目立つ。江戸川区も「水辺の充実度」や「自然環境の満足度」など環境分野では首位となった。
半面、住宅地として評価が高かった「西」の世田谷区(13位)や杉並区(14位)はトップ10から外れた。世田谷区や杉並区は「空き家率の低さ」や「要支援・要介護高齢者の少なさ」などで評価が低く、振るわなかった。住宅と住民の「2つの老い」への対応が課題となっている。高級住宅街の田園調布がある大田区も15位にとどまった。
今回の調査を主導した市川宏雄・明治大学名誉教授は「かつて高級住宅地と言えば田園調布だったが今は都心だ。近年の都心回帰の要因が今回の調査には表れている」と指摘している。
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