2018年10月28日日曜日

エリート社員がハマった最悪の不動産投資


高額の不動産を買うとき「美人」や「イケメン」が出てきたら、気を付けたほうがいいかもしれない(写真:xiangtao / PIXTA)

「かぼちゃの馬車」事件などでスルガ銀行の不正融資が明るみに出たことで、サラリーマンの不動産投資に赤信号が灯っています。収益性の低い物件をつかまされ、多額のローンが支払えず自己破産を選ばざるをえない人もいるようです。

実はこうした不動産投資で失敗している人の中には、大手企業に勤める高年収のエリートサラリーマンも少なくありません。私のところにもそんな1人が相談に来られました。35歳会社員のA男さんは、数週間前に不動産投資の契約をし、セカンドオピニオンを求めて来ました。早速、契約した物件の詳細を見せてもらったところ、あまりにも収益性が低い物件だったので驚きました。そこで、じっくりお話を聞いてみることにしました。

まじめで誠実、信用力のある大手企業社員が危ない

A男さんは、誰もが知っている上場企業に勤める会社員です。パソコンが趣味のA男さんは、週末はよく東京・秋葉原の電気街を見て回っているそうです。まじめで誠実な人柄なのが、お話をしていると伝わってきます。

相談内容は、すでに数週間前「不動産投資をするために新築ワンルーム物件を契約したが、不動産投資に詳しいファイナンシャルプランナーから見て、物件が大丈夫なのかどうかを判断してもらいたい」、とのことでした。

早速、物件を拝見すると、その物件は新築の投資用マンションでした。都内は都内ですが、最寄り駅となるとやや郊外の部類に属し、駅からはさらに徒歩15分という立地です。やや広めの1DKですが価格は4500万円ということでした。販売する側の利益がかなり上乗せされた、決して手を出してはいけない物件だと一目でわかりました。

実際、A男さんが契約した物件と同じエリアにある同条件の新築物件価格を調べると、相場は2500万〜3000万円でした。

普通に考えればこのような物件には契約しないはず。ではなぜ、A男さんほどのエリートが契約してしまったのか、筆者には疑問でした。そこで、物件を契約するまでの経緯をA男さんに聞いてみることにしました。

A男さんは、そろそろ結婚したいと思っていますが、現在おつきあいしている人はいません。年老いた親に会うたびに、将来に不安を抱くようになったと言います。あるとき、同僚に不動産投資をやっている人が数名いることがわかり、相談したところ、資産運用セミナーへの参加を勧められたそうです。

不動産投資に関してまったくの素人だったA男さんは、直接セミナーに参加して話を聞いたほうがよさそうだと思い、初心者向けの資産運用セミナーに参加しました。そのランディングページ(募集ページ)を見せてもらいましたが、不動産投資を勧めている様子はいっさいなく、一般的な資産運用の内容が学べるようなセミナーのようでした。

イケメンや美人が担当についたら要注意

不動産投資セミナーでひととおり話を聞いているうちに、「安定的に家賃収入が入れば、老後の年金の足しになるかもしれないし、不動産投資も悪くないな」と、A男さんはがぜん、不動産投資に興味を持ちました。

セミナー終了後、個別相談できる機会があったため、A男さんはさらに深く話を聞こうと申し込みをしました。そこで、A男さんの担当をしたのが、美人営業ウーマンのR子さんだったといいます。アイドルグループにいそうな、とてもキュートでスタイル抜群の美人でA男さんは、R子さんが目の前に座っただけでドキドキしてしまったそうです。容姿もさることながら話術にも長けており、個別相談の間、会話も弾んだそうです。

R子さんの説明はわかりやすく、話も弾みましたが、慎重なA男さんはその場では決断できませんでした。そんなA男さんにR子さんは、「後日、カフェで会いませんか? そのときにもっと詳しくご説明します」と、A男さんをカフェに誘ったそうです。

結局、次の週末にA男さんは、R子さんと銀座のおしゃれなカフェで会いました。

A男さんは大学を卒業して以来、ずっと彼女がいなかったので、女性と2人きりで会うのは久しぶりだったのです。しかも美人のR子さんですから、ドキドキしてしまうのも当然でしょう。

R子さんは、A男さんの仕事のことからプライベートまで、屈託のない笑顔でどんどん質問をしてきます。

「お仕事はどんなことをしているんですか?」

「趣味はなんですか?」

「休日は何をして過ごしているんですか?」

A男さんはR子さんと話しているうちに「かわいいし、話も面白いし、いい子だな。彼女が不動産投資を勧めるのだからいいのかもしれないな。あんまり細かいことを言うと嫌われそうだし、契約しよう」と思ったそうです。

カフェでは、不動産投資について簡単な説明しかなかったそうですが、A男さんは後日、その不動産会社に出向き、あっさり契約してしまったのです。

美人営業と「疑似デート」後、契約したらなしのつぶて

しかし、契約してからというもの、それまで頻繁に来ていたR子さんからの連絡もパタリとやみ、メールで連絡しても返信がなかなか返ってこなくなったそうです。どうやらこの会社は、イケメンや美人が営業を担当し、顧客をその気にさせて契約させる「デート商法」のやり方で、業績を伸ばしているようでした。最近、イケメンや美人をホストやキャバクラからスカウトして、こうした古典的な「デート商法」で契約を取りつける不動産会社が増えているのです。

急に冷たくなったR子さんの態度を見て、「もしかしたら、これはだまされたのかもしれない……」とようやく冷静になったといいます。これは、「一度、専門家に見てもらったほうがよいかもしれない」と思い立ち、筆者のところに相談に来られたというわけです。

A男さんが契約した物件は冒頭でもお伝えしたように、実際相場よりもかなり高く販売されており物件の概要データを見ただけで、良心的な会社とは言いがたいものがありました。

では、肝心の融資状況はどうだったのでしょうか。A男さんは勤務先も安定しており、勤務期間も長かったため、頭金10万円、金利1%程度、融資期間45年という好条件で、物件価格の大半を融資されました。しかし、貸すといっても、毎月11万円の家賃収入よりも返済額のほうが多く、毎月のキャッシュフローは、マイナス1万円。そのほかにも、管理費、修繕積立金のほか、固定資産税などの負担もあるのです。またそもそも東京郊外でかつ最寄り駅から15分も離れており、エリアにしては家賃が高いため、空室リスクも高い物件でした。

A男さんはわずか数週間前に契約をとりかわした物件ではあるものの、この物件の売却を決意しました。まず、契約内容を再確認したところ、残念ながらクーリングオフはできませんでした。

しかし、正式契約の履行前だったので違約金を払えば、契約解除できる段階でした。そこで、A男さんは迷わず違約金200万円を支払い、契約を解除。200万円はかなり痛い出費でしたが、こうした将来的にマイナスしかもたらさない「負動産」を持ち続けるよりはまだマシだったでしょう。契約履行後だったら、損切りしたくても、売るに売れない状態に陥っていたことを考えれば、本当に幸運だったと思います。

初めての不動産投資で失敗してしまったA男さんですが、不動産投資自体には前向きでした。そこで、筆者の知り合いの信頼できる不動産会社を紹介し、きちんと収益が上がる中古物件を紹介してもらうことにしました。

よい投資物件を選ぶ基本は「(新築より)中古を選ぶこと」「駅から近いこと」「相場よりも安いこと」「賃貸需要が旺盛で、将来性があり利便性のいいエリアであること」などです。こうした優良な物件を紹介してくれる不動産会社といかに出会えるかが、不動産投資に置ける成功のカギです。

情報開示が遅れていて、グレーな部分の多い不動産業界は、A男さんが初めに契約した会社のような悪徳業者も少なくありません。ですから、不動産投資をする場合、いくつか不動産会社に当たってみるといいでしょう。数をこなすことで、提供される物件やスタッフの知識レベル、対応などから優良な会社を見極めることができるようになります。

また、詳細は割愛しますが、不動産は買っておしまいではなく、その後、賃貸付けや賃貸管理が発生します。また、途中で売却するかもしれません。そんなときに、優良な管理会社とつきあえるかどうかも、不動産投資の成功に大きく影響します。

投資をするなら、関連書籍を最低数冊は読み込むこと

不動産投資に限らず、どんな投資でも基本は同じです。まずは、自分自身できちんと勉強して、リテラシーを身に付けることがなによりも大切です。A男さんのように、知識がないのに丸腰で臨むのはまさに「カモネギ」と言えるでしょう。最低でも不動産投資について書かれた本を数冊読んだうえで、プロや実際に投資をしている人に意見を聞いたりして、自分なりの相場観やエリア観などの判断基準を持つとよいでしょう。

今回、A男さんは高い授業料を払うことになりましたが、物件を持ち続けるマイナスを考えれば、軽症で済んだ不幸中の幸いのケースでした。今では投資に適した物件を購入、順調に運用しており、2件目を検討していると言います。そして、「今回の経験を活かして、恋人選びも間違えないようにします」とのこと。 A男さんが、「お金」とよりよいパートナーになれることを祈るとともに、すてきな恋人もできることを心から願っています。

Let's block ads! (Why?)

Read Again http://news.livedoor.com/article/detail/15509288/

0 件のコメント:

コメントを投稿