2018年10月1日月曜日

焦点:貿易摩擦が企業心理に影、展望リポートへ日銀分析急ぐ

[東京 1日 ロイター] - 株高・円安が続く市場動向とは裏腹に、企業の景況感がさえない。日銀が1日に発表した9月短観では、大企業・製造業の業況判断DIが3四半期連続で、同非製造業は2年ぶりに悪化した。米中貿易摩擦など保護主義的な通商政策の強まりが、企業心理に暗い影を落としつつある。日銀は10月末に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に向け、貿易問題の影響について分析を深めていく考えだ。

 10月1日、株高・円安が続く市場動向とは裏腹に、企業の景況感がさえない。写真は横浜港で昨年5月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

9月日銀短観は大企業・製造業の業況判断DIがプラス19となり、3四半期連続で悪化した。3期続けて悪化するのは、2007年12月調査から09年3月調査まで5期連続で悪化して以来、約10年ぶりだ。好調を維持してきた同非製造業もプラス22と8四半期ぶりの悪化となった。

それでも日銀では、相次いだ自然災害によって物流や生産への被害が発生したことを踏まえれば、今回の短観はそれなりにしっかりした内容と受けとめているようだ。

内外需のバランスのとれた成長が持続する中、好調な収益環境を背景に企業の景況感が高水準にあるのは事実。先行きは同製造業・非製造業ともに横ばいを見込んでおり、先行き慎重になりやすい短観の特徴を前提にすれば、企業マインドが悲観に傾いてみるのは早計といえる。

設備投資計画は過去平均を上回るペースを維持しており、売上高経常利益率も「歴史的な高水準」(調査統計局幹部)にあるなど、しっかりした事業計画に大きな変化はみられていない。

もっとも、激化する米中貿易摩擦など保護主義的な通商政策に対する企業の懸念は着実に強まっているようだ。

日銀によると、貿易摩擦の足元の業績などへの影響はみられていないが、先行きを慎重にする要因と指摘する企業は増えているという。

経済産業省が28日発表した8月鉱工業生産指数速報は前月比0.7%上昇し、4カ月ぶりに上昇したものの、事前の市場予想を下回る弱めの内容になった。特に電子部品・デバイス工業が同8.8%減となり、前月段階での微増計画が大幅な減少となったことが足を引っ張った。

現時点で具体的な要因は定かではないが、日銀では、こうした背景に米中貿易摩擦が影響していないか、慎重に分析を進めているもようだ。

黒田東彦総裁は9月25日に大阪市内で講演し、先行きのリスク要因のうち、貿易問題の帰すうに最も強い警戒感を示した。「保護主義的な政策は、当事国であろうとなかろうと、誰にとってもメリットがない」と断言し、「この問題が金融市場や企業マインドの不安定化につながらないようにするためにも、各国間で真摯に議論を重ねていくことが不可欠だ」と強調した。

現段階で貿易問題の影響は数字にこそ明確に表れていないものの、日銀短観で企業から寄せられた声からは、すでに企業マインドに暗い影を落とし始めている可能性がある。収束の兆しがみえない米中貿易摩擦を中心に、問題の長期化自体が企業マインドに悪影響を与えかねず、日銀は動向を注視している。

伊藤純夫 編集:田巻一彦

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