既報の通り、シャープがスマートフォンAQUOSの新製品「AQUOS zero」を2018年冬に投入する。最大の特徴は、シャープのスマートフォンとして初めて有機ELディスプレイを搭載したこと。6.2型WQHD+(1440×2992ピクセル)、Snapdragon 845、6GBメモリ、128GBストレージなど高いスペックを持つフラグシップスマホだ。
シャープのフラグシップスマホといえば、2017年から展開している「AQUOS R」シリーズがおなじみで、こちらは省エネ性能に優れたIGZOディスプレイを搭載している。シャープはなぜ、有機ELを搭載したAQUOS zeroを開発したのか。
「画質」と「軽さ」で差別化を図る
通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏は、大きく2つの理由があると説明する。1つが「画質」。有機ELは液晶よりも色域が広いため、「液晶では見られない濃い緑色や深い青色が表現できるようになった」と同氏。ただし有機ELの持つ広色域をそのまま表現しようとすると、不自然で“べったり”とした色になってしまうため、色調機能をゼロベースで見直したという。シャープの高画質化技術「リッチカラーテクノロジーモバイル」により、「もともと存在していない色を表現することに成功した」と小林氏は胸を張る。
AQUOS zeroの有機ELはシャープが全て自社で開発している。スマートフォンとディスプレイの部隊が一体となって開発することで、シャープならではのチューニングがしやすくなるというメリットも生まれる。
2つ目の理由が「構造」。スマートフォンは大画面化が進んでおり、それに比例して重さも増している。「ディスプレイを駆動させるためにより大きなバッテリーが必要になり、堅牢(けんろう)な構造設計も求められる。ガラスや金属などの重量が加わり、ハイエンド機種は200gに達している」と小林氏。高性能なスマホを使う人ほど、重いスマホを手にしているため、大画面と軽量化の両立に取り組んだ。
有機ELはバックライトを搭載していないため、液晶よりも軽い。これに加えて、AQUOS zeroでは側面にマグネシウムを採用したことで、AQUOS R2のアルミフレームよりも約41%軽量化できた。背面にガラスや金属ではなく「アラミド繊維」という軽量な素材を採用したことも大きい。こうした工夫によって、重量を約146gに抑えることができた。これは200g超のスマホよりも50g以上軽い。シャープによると、6型以上、3000mAhを超えるバッテリーを搭載するスマホの中では世界最軽量を実現したという。
有機ELは「薄くしやすい」「曲げられる」という特性も持っている。本体の薄型化に加え、曲げてベゼルを狭めることで画面占有率アップにも貢献する。
ディスプレイ前面にノッチ(切り欠き)があるデザインは他のスマートフォンでもおなじみだが、AQUOS R2のように、インカメラだけが露出するようなデザインも検討はしたという。「ステレオスピーカーの影響で、ワイドなノッチを採用した。独創的な形状、新しいことに取り組むのはシャープのDNAなので、検討していきたい」(小林氏)とした。
AQUOS Rシリーズとのすみ分けは?
IGZOディスプレイを搭載するAQUOS Rシリーズも、当面は継続していき、今後Rとzeroどちらかに統一するかは未定。IGZOは静止状態では画像の更新を抑えて消費電力を抑え、動画視聴時やスクロール時は更新回数を増やして視認性やタッチレスポンスが向上する、という特性を持つ。こうしたディスプレイのパフォーマンスはIGZOの方が優れている。画質については、決してIGZOが劣っているというわけではなく、「色の再現性はIGZOの方が優れている」と小林氏は認める。
小林氏はAQUOS zeroについて、「より攻撃的な商品」だと説明する。独自開発の有機ELや“世界最軽量”のボディーに加え、Dolby Atmos対応のステレオスピーカー、6GBメモリや128GBストレージなどAQUOS R2をしのぐスペックを持つ。充電用のICを2つ搭載することで充電中に熱が一極集中しないようにする「パラレル充電」もzeroならではの機能だ。
一方で、より大画面を楽しんでもらうべくホームボタンは廃止し、イヤフォンジャックやmicroSDスロットもなくしている。細かいところでは、R2では利用できる「のぞき見防止ブロック」もzeroでは対応していない。シャープの目指す薄さや軽さを実現すべく、AQUOS R2で搭載したデュアルカメラ(静止画専用+動画専用カメラ)は見送られた。こうした取捨選択も、攻撃的な仕様の結果だ。スマホゲームをガンガン遊ぶ、動画を長時間見るといった使い方にzeroは向いている。“全部入り”で安心できるのがAQUOS R2、軽さと性能を追求したのがAQUOS zeroといえる。
2020年にAndroidシェア40%超を目指す
同時に発表したミッドレンジの「AQUOS sense2」は、累計200万台超の売れ行きを誇るシリーズの最新モデル。アスペクト比が18:9の約5.5型フルHD+IGZO液晶ディスプレイを搭載し、前モデル「AQUOS sense」から表示領域が23%拡大した。バックライトの透過率を上げたことで、AQUOS sense比で約21%の消費電力削減に成功。防水性能やおサイフケータイもサポートする。
商品企画を担当した通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏は、AQUOS sense2では「必要十分な進化」と「使いやすさの追求」にこだわったと話す。今回もドコモやKDDIなどのキャリアが扱えば、初代AQUOS senseと同様に、2018年〜2019年にかけてヒットモデルにないそうだ。通信事業本部 本部長の中野吉朗氏は、2020年にAndroidシェア40%超を目標に掲げるが、AQUOS senseシリーズのようなミッドレンジ機は、シェア拡大には欠かせないだろう。
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