日銀は9日、現体制で最後となる金融政策決定会合を開き、現行の金融緩和策を維持した。黒田東彦総裁は「異次元」と銘打った大規模な緩和策を始めたが、2%の物価安定目標を達成しないまま1期5年を終える。同日の記者会見で「デフレマインドの転換に時間が掛かっている」と目標未達の理由を説明。出口議論も封印し、長期戦の覚悟で次の5年にのぞむ。
黒田総裁は5年間で2%の物価目標が達成できなかった背景を人々のデフレ心理に求めた。この5年間は原油安や消費増税など物価上昇に逆風となる誤算が相次いだが「より大きな原因」としてデフレ心理を挙げた。長く続いたデフレで人々が物価は上がると想定しづらくなり、実際の物価も上がりづらくなっているとの説明だ。
デフレ心理の転換は黒田総裁が当初想定していた以上に時間がかかり、この5年間で日銀は緩和策を長期化する体制を整えた。当初は国債買い入れの拡大など量的緩和の追加に動いたが国債買い入れには限界説が流れ、2016年9月に金利操作へと緩和手法の主軸を転換。9日の会見で黒田総裁は「重要な変更だった」と振り返り、「緩和を粘り強く続ける」と従来の方針を繰り返した。
日銀には現状の緩和策を続ければいずれは物価が2%に到達するとの見通しがある。黒田総裁は日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」が改善し、企業は賃上げや価格引き上げに積極的になり始めたと強調。19年度ごろには物価は2%に達するとの従来の見方を改めて披露した。
2月には世界株安など金融市場でリスク回避の動きが強まったが「経済の良好なファンダメンタルズに大きな変化はない」と経済の足腰が強くなった点を強調。米トランプ政権が保護主義的な姿勢を強めれば円高・ドル安が進みやすいことについては「保護主義が世界的に進むとは考えていない」と指摘した。
長期戦となる次の5年を見据えて黒田総裁が強調したのは緩和の継続姿勢だ。正常化観測が流れれば、円相場は上昇し輸出企業の収益が押し下げられる可能性がある。企業業績が悪化すれば賃上げが遅れ、物価上昇に足かせとなる。黒田総裁は「(物価上昇の)モメンタム(勢い)が維持されていなければ追加緩和を検討」と述べた。
一方、緩和が長引くほど金融機関の収益悪化など副作用への目配りは従来以上に求められる。黒田総裁は「出口を具体的に議論する時ではない」と正常化観測を退けつつ、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金利誘導水準の微調整は出口議論とは別にあり得るとの考えを披露。物価上昇基調が高まった場合の名目金利の引き上げは「理論的には成り立つ」と政策調整の余地を残した。
黒田総裁は政府から再任案が提示されており、国会の同意を経て4月9日から次の5年を迎える。今回が最後の定例会見となる中曽宏氏、岩田規久男氏の両副総裁に対しては「2人の経験や知識で有益で建設的な議論ができた」と話し「経済状況は大きく改善した」と振り返った。
次期副総裁には若田部昌澄・早大教授と、雨宮正佳・日銀理事が指名されている。緩和に積極的な「リフレ派」として知られる若田部氏は国会での所信表明で追加緩和も選択肢と述べたが、副作用などを考慮すると軽々に追加緩和策は打てないのが実情だ。緩和策を縮小も拡大もできず、金融政策の現状維持を続ける黒田日銀。手詰まりのまま次の5年を迎えようとしている。
Read Again https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27927640Z00C18A3EA3000/
0 件のコメント:
コメントを投稿