2018年4月4日水曜日

中国、大豆・牛肉・飛行機に報復関税

 【北京=原田逸策、ワシントン=鳳山太成】中国政府は4日、米国産の大豆、牛肉、自動車、飛行機など計106品目に25%の関税をかけると発表した。米国が中国の産業機械など1300品目に25%の関税をかける方針を決めたことへの報復措置となる。関税の対象額は米中ともに500億ドル(約5兆3千億円)。米中という世界の2大経済大国で貿易戦争が起きれば、世界経済の波乱要因となりかねない。

北京で4日記者会見する中国の王受文商務次官(右)と朱光耀財政次官(中央)=共同

北京で4日記者会見する中国の王受文商務次官(右)と朱光耀財政次官(中央)=共同

 中国の措置は米国が通商法301条に基づき、中国の知的財産侵害への制裁として公表した関税措置への報復となる。中国商務省は4日朝に「同じ規模、同じ強さの報復措置を近く公表する」との声明を発表していた。

 中国の対抗措置は関税の税率25%、対象物品の金額500億ドルともに米国と同じ。中国商務省の王受文次官は4日の記者会見で「我々は受け身で抑制的だ」と述べた。

 ただ、両国が対象に選んだ品目は対照的だ。中国が選んだのは大豆、牛肉、綿花、トウモロコシなど農産品が目立つ。とくに大豆は米国の輸出量のうち6割を中国向けが占め、米国の農家への影響が無視できない。

 有力な大豆産地のアイオワ州、オハイオ州、ミシガン州などは共和党と民主党の支持率が拮抗し、11月の米中間選挙の行方を左右する地域。中国は共和党の打撃になるよう大豆を選んだようだ。

 輸入額の大きな工業製品では自動車と飛行機が含まれた一方、半導体は外れた。クアルコムなどの半導体の輸入コストが上がれば、中国のスマートフォン(スマホ)産業に影響が出ると判断したとみられる。

 一方、米通商代表部(USTR)が選んだのは工業製品が多い。産業機械、航空機、船舶、鉄道、電気自動車、医薬品など対象は多岐にわたるが、USTRは「(中国の産業政策)『中国製造2025』に基づいて品目を特定した」と説明する。

 中国製造2025は産業を高度化し、49年までに世界一の製造強国になる目標を掲げた戦略。ナバロ通商製造政策局長は「『将来の新興産業はすべて中国が独占する』と世界に宣言しているようなものだ」と批判する。産業ロボットや航空宇宙など10の産業を重点分野に選んだが、制裁案はこれを狙い撃ちにした。

 今回の制裁では米消費者への影響が大きいスマホやパソコンなどは対象外としたものの、今回の制裁発動は両国の貿易摩擦が将来の技術覇権を巡る争いの様相を呈していることを意味する。

 米中とも貿易戦争を避けたいのが本音で水面下で交渉も進める。米国は5月下旬まで意見を募りトランプ大統領が発動するか決める。中国の関税も発動時期は明らかにしておらず、交渉の時間はある。王商務次官は「交渉や協議の門はいつも開いている」と強調した。

 中国側は貿易摩擦が弱みの金融分野に飛び火する展開を警戒する。

 中国の外貨準備は3兆ドルを超え、米国債の世界最大の保有国。市場では「中国が米国債を売却する」との警戒があるが、中国財政省の朱光耀次官は4日に「(外貨準備の運用は)安全性、流動性、収益性を重視する。中国は責任ある国際投資家だ」と述べ、米国債売却の観測を否定した。

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