試乗2018.4.6レポート:岡崎 五朗 / 写真:小林 俊樹
シンプルな造形でボルボらしさを表現できている
ここ1年のボルボの勢いはすごい、XC60は日本カーオブザイヤー、北米SUVオブザイヤー、英国カーオブザイヤー、ワールドカーアワードを受賞。今回紹介するXC40もすでに欧州カーオブザイヤーを獲得している。まさにアワード総ナメ。もともとボルボが好きで、初代XC90やV40のオーナーだったこともある僕からしても、数年前には予想すらできなかった快進撃である。
その背景にあるのが中国資本の導入というのは何とも興味深い。2010年に親会社がフォードから中国のジーリーに変わったことで、ボルボは莫大な開発資金を獲得。しかもジーリーは「カネは出すが口は出さない」というなんとも太っ腹な方針を打ち出した。これを受けボルボは新しいプラットフォームの開発に着手。その結果生まれたのが現行XC90だ。そしてそのプラットフォームを使いV90/S90、XC60と立て続けに新商品をリリース。先日のジュネーブモーターショーでは、これまた美しい姿をもつ新型V60をデビューさせた。
インド資本の傘下入りし息を吹き返したジャガー/ランドローバーもそうだが、エンジンやプラットフォームを使い回してコスト低減を図るというフォード流ビジネスは、プレミアムブランドの魅力をスポイルこそすれ、増すことはできなかった。そう、プレミアムに必要なのは効率ではなく、独自性なのである。
そういう意味でいくと、XC40もまた独自性の塊のようなモデルだ。コンセプト自体はいま流行りのコンパクトSUVだが、まずデザインが素晴らしい。なかでもいいなと思ったのは、全体をシンプルでクリーンな造形で構成していること。グリルにしても、昨今の流行にあえて背を向けたかのように、シンプルな形にとどめている。それでいて、きちんとボルボらしさを表現できているのがすごい。
たとえグリルからアイアンマークを外してしまっても、誰もがこれはボルボだとわかるはず。ドイツ車やレクサスのように、大きくて派手な顔つきにしなくても、オリジナリティはちゃんと表現できるんだ、というお手本のようなデザインである。最近のカーデザインはさながら顔競争の様相を呈しているが、ボルボのデザインはそんな状況にアンチテーゼを投げかけているようにすら思える。いずれにしても、盛り盛りのデザインではなく、引き算のデザインをさせたらいま最高に上手なのがボルボである。
試乗ステージ:箱根エリア
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