2018年10月26日金曜日

焦点:生損保が国内回帰、金利1%以下の超長期債で消去法的運用

[東京 26日 ロイター] - 国内主要生損保の2018年度下期一般勘定運用計画がほぼ出そろった。目立ったのは、一部に国内回帰の動きが出てきたことだ。超長期国債の利回りは積極的運用のめどとされる1%に届いていないものの、日銀の政策修正もあって若干ながら上昇してきた。

 10月26日、国内主要生損保の2018年度下期一般勘定運用計画がほぼ出そろった。目立ったのは、一部に国内回帰の動きが出てきたことだ。2011年8月撮影(2018年 ロイター/Yuriko Nakao)

為替コストが高いヘッジ付米国債での運用が難しいなか、消去法的な投資が増え始めている。

<超長期債47%増の1.8兆円>

国内の運用難の環境に変わりはない。日本の30年債金利JP30YTN=JBTCが18年度上期中に最も上昇したのは9月26日の0.915%。米金利が上昇したほか、7月末に日銀が政策金利レンジの柔軟化を図ったこともあって、4月当初の0.7%台から上昇したものの、それでも積極的な運用に転換するめどとされる1%には届かなかった。

しかしながら、あくまで1%は「積極的な」運用のめど。消去法的な運用であれば、金利が0.9%台に乗せてきた円建て超長期債は、それなりに魅力があるようだ。

予定利率引き下げ(1%から0.25%)後の契約に対応した商品は1%の利回り確保が必要ないほか、債券や貸付の償還資金などの振り向け先として、利回りに乏しいとしても需要は一定程度ある。

日本生命は上期、新規資金のうち20─30年債を含む日本国債の残高が、約7000億円増加した。積み上がっていた短期資金の振り向け先としての運用が中心だったが、下期も「ヘッジ付き外債との相対感で配分を調整していきたい」(財務企画部長の秋山直紀氏)としている。

明治安田生命の円債投資は、償還が多く通年ではやや減少の計画だが、10月以降は超長期債の購入を進めている。「特に1%は意識していない。何に投資するのがベストかを考えて運用していく」(執行役副社長の山下敏彦氏)という。

富国生命保険・財務企画部長の渡部毅彦氏は、貿易摩擦や中国の景気減速リスクなど海外情勢の不透明感が強いとしたうえで、「利回りは依然として十分ではないが、消去法的に資金を置いておくことも考えないといけないかもしれない」と話している。

日本証券業協会のデータによると、国内生損保は4月以降、6カ月連続で超長期債を買い越し。累計で1兆8337億円(前年比47.9%増)に達している。

<懸念は流動性低下>

一方、円債投資に依然として慎重な見方もある。予定利率が引き下げられたのは17年4月からであり、新利率に対応した保険商品の割合はまだ小さい。ALM(資産と負債の総合管理)上、ある程度の高い利回りは欠かせない。

第一生命は30%年債の利回りが1%を超えたからといって、それだけで積極的な買いに転じることはないとしている。ヘッジ付外債との比較感で買いに動く可能性はあるとしながらも「(保険商品の)負債にマッチさせる」(運用企画部長の重本和之氏)のが基本だとする。

三井生命も円債投資は下期横ばいを見込む。日銀の政策修正で円債金利は若干上昇したものの、前川等執行役員運用統括部長は「運用方針に影響を与えるほどのインパクトはない」と指摘。その上で20年物、30年物のゾーンで金利が「1%くらいあればありがたい」と述べる。

超長期債の2018年度発行計画は40年債を合わせても22.8兆円(20年債12兆円、30年債8.4兆円、40年債2.4兆円)。5年債の24兆円や10年債の26.4兆円などに比べ規模は小さい。

かんぽ生命は下期、新規資金1.5兆円弱のうち、半分超を円金利資産に投資する方針だが、懸念要因は流動性低下だという。「30年債の1%程度は、負債コストを踏まえて買える水準」(運用企画部長の浅井重明氏)であるものの、過度に投資すれば、金利を押し下げる要因になりかねないため、慎重に投資のタイミングを見極める考えだ。

<オープンシフト継続>

消去法的にせよ金利水準はまだ不十分な超長期債を積み増す可能性があるのは、円債の代替商品であった為替ヘッジ付き米国債での運用が難しくなっているからだ。

米国の10年国債利回りUS10YT=RRは一時3.2%台まで上昇したが、同時に為替ヘッジコストも年末越え需要が加わり足元は3%水準まで上昇している。トータルではほとんどリターンが出ない。

このため、為替ヘッジ付の外債を買うにしても、ヘッジコストが低い欧州債やオーストラリア債、もしくは米国債よりも利回りが高い米社債などが下期も中心となる見通しだ。

一方、為替をヘッジしないオープン外債は引き続き増加傾向にある。ヘッジコストさえなければ、10年米国債利回りの3%台は魅力的。主要国で米国債を上回るのはイタリア債ぐらいであり、いざとなれば売ることが容易であるという流動性の面も申し分ない。

しかし、オープン外債投資は為替(円高)リスクを抱え込むことになる。日米金利差などから極端な円高にはならないという各社ほぼ共通の相場見通しが投資を促しているが相場は水物。クレジット(社債)投資などの信用リスクを含め、リスクを抱えながら運用難の状況を乗り切ろうとする国内生損保の姿は下期も続きそうだ。

伊賀大記 編集:石田仁志

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