2018年10月1日月曜日

3県9月短観 2期ぶり悪化 米中の不透明感を警戒

日銀金沢支店が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は全産業の業況判断指数(DI)がプラス14となり、前回の6月短観に比べ1ポイント低下した。原材料高や人手不足が響き、2期ぶりに悪化した。北陸は化学や機械などを中心に輸出関連の製造業が多く、今後は先鋭化する米中貿易戦争や頻発する自然災害がリスク要因になりそうだ。

工作機械は中国向けの受注に陰りが出てきた

DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。調査は8月27日~9月28日に実施し349社が回答した。

製造業のDIはプラス19と前回より4ポイント悪化した。化学は原油価格の上昇によるコスト高、機械関連は鉄鋼などの原材料高と外注加工費の上昇が影響した。電子部品などの電気機械も設備投資による償却負担や人件費の増加が響き、全般にコスト要因が景況感を押し下げた。

非製造業は2ポイント改善しプラス11となった。猛暑の影響で季節家電や飲料の販売が好調だったほか、福井国体の開催に伴う広告収入の増加などが寄与した。製造業の生産活動が活発なため、梱包などの対事業所サービスや運輸の景況感も上向いた。同支店は「全体の景況感は横ばいと評価できる」とした。

一方で先行きのDIは全産業でプラス11と3ポイントの悪化見通しとなった。原料高や人手不足に伴うコストアップが引き続き重荷になる。

■「中国向け受注減」「台風で訪日客減少」

今後の北陸景気のリスク要因になりそうなのが米中の貿易戦争の行方だ。「中国向けの工作機械受注の勢いが鈍ってきた」と話すのは中村留精密工業(石川県白山市)。対米輸出の不透明感を背景に中国の投資意欲に陰りが出ているという。同業のスギノマシン(富山県魚津市)も「投資を先延ばしする顧客が出て売り上げが後ずれする可能性がある」と懸念する。

セーレンは米国のカーシート工場で中国から調達している染料や原糸が追加関税の対象となる可能性があり、調達先のタイやインドネシアへの変更を検討している。同社は「通常、仕入れ先の変更には半年程度かけるが今回は別」と話す。

すでに企業業績にも響いている。銅スクラップ販売の黒谷は2018年8月期通期の連結純利益を前期比59%減に下方修正した。主因は銅の国際価格の急落による採算の悪化。担当者は「貿易戦争で中国の銅需要にマイナスの影響が出るのではとの警戒感が相場に影響した」と説明する。

大同工業は米テネシー州の生産拠点で昨年から四輪車チェーンの一貫生産を始めた。それまで日本から輸入していた部品を現地生産に切り替えて為替リスクを抑える狙いだが、今は米国が鉄鋼関税を引き上げたあおりで現地の鋼材価格が高騰。生産コストの上昇要因になるという。

相次ぐ自然災害も重荷になる。金沢ニューグランドホテルプレミア(金沢市)は宿泊客の約2割を訪日外国人が占めるが、台風24号の影響による宿泊キャンセルが120件に及んだ。災害の頻発による訪日客の落ち込みが懸念材料だ。

あわら温泉(福井県あわら市)の旅館、清風荘は大阪北部地震や西日本豪雨が響き「夏休み前まで非常に厳しい状況だった」(伊藤由紀夫社長)と振り返る。足元は福井国体の関係者の宿泊が増え活況だが「11月以降は再び厳しくなる」と見る。

小売業界からは「停電や断水の影響から水や電池の需要が伸びた」(ゲンキー)との声がある一方、野菜などの価格高騰の影響を懸念する声も聞かれた。

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