世帯年収760万円の4人家族で、毎月の家計は2万5000円の赤字。家族は「贅沢しているつもりはない」というが、調べてみると毎月12万円の食費がかかっていた。なぜ「贅沢しているつもりはない」と思っていたのか。その悪しき仕組みをFPの横山光昭氏が解き明かす。
■食費でパンクする家庭の常套句は……
●家族構成(4人家族)
会社員のLさん(46)/専業主婦の妻(44)/小学校6年生の長男/小学校3年生の次男
●手取り収入(月) 38万6000円(夫)、0円(妻)
●年収(額面/ボーナス込み) 760万円(夫)
●貯蓄 210万円
「特別いいものを食べているわけではないし、贅沢もしていないと思うんですけど……」
ご夫婦で口をそろえて言うのは、会社員のLさん(46)と専業主婦の妻(44)。悩みは思うようにお金が貯まらないということ。手取り月収が38万円を超えているのに、毎月赤字になるのだそうです。
ご家族は、ご夫婦と小学6年と小学3年の息子さんの4人。夫の年収は760万円ほどです。やりくりで難しさを感じているのは食費で、給料日が来るまでは安心できず、特に給料日前は食材の買い控えをするなど、食事の内容に波があるということです。
家計簿をつけても長続きせず、支出の細かな状況はすぐにはつかめません。そのため、聞き取りをしながら各費目の金額を推測していきました。
▼食費は12万円「贅沢なもの食べているわけではない」
すると、食費が毎月12万円もかかっていることが分かったのです。
月により多少の前後はあるでしょう。また、食事には外食も含まれています。しかし、そうは言っても、これはかかりすぎです。ご夫婦ともにその額に目を丸くしていました。
「生活費がずいぶんかかっているとは思っていたけれど、食費だけでこれほどかかっていたなんて」
そして、冒頭の発言となりました。「特別いいものや贅沢なものを食べているわけではない」。これは、食費の高い家庭からよく聞く言葉です。
■なぜ専業主婦の妻は食費に「糸目をつけない」のか?
確認したところ、たしかにLさん宅のご家族は特に「美食家」ではありません。高級食材を使ったり、特別なこだわりを持ったりしているわけでもありません。ただひとつ大事にしていることが、「みんなが食べたいメニューを食べる」ということでした。
「夫は懸命に働いてくれますし、子どもたちも日々をエネルギッシュに生きています。私は主婦として、そんな“男たち”への栄養補給をしっかりやりたい、彼らが食べたいと思うものを食べさせてあげたい、という気持ちがありました」(妻)
というわけで、「食べたいと思ったものは、その日のうちに食べないと気が済まない」という状況だといいます。冷蔵庫にない食材をわざわざ買いに出向くことがよくあり、すしやピザなどのデリバリーサービスやネットスーパーなどもよく利用するそうです。
これらは食費の高い家庭に共通する特徴です。端的に言えば、食べることに関してまったく無計画なのです。ひとつひとつの食材や商品は、高額ではないでしょうが、食べたいものを今食べたいという衝動が強く、「次の機会にしよう」という歯止めが利きません。欲望のままにお金を使ってしまっているのです。このことは食費だけでなく日用品にも同じことが言えました。
▼「今食べたい=今欲しい=今買いたい」歯止めなき消費衝動
そういったお金の使い方・考え方が家計全体に影響していて、全体的に支出が膨らみ、赤字家計になっていたのです。貯蓄は何とか210万円を維持しているものの、子どもの教育費や老後資金、その他のイレギュラーな支出への備えを考慮すると、40代としては心もとない金額です。
■どうやって食費を月5万円も削減したのか?
そこで、なんとか食費を下げるため、2つの案を提案しました。
ひとつは、現金主義にすること。現在はポイントを得る目的もあって、買い物はほとんどクレジットカードを利用していますが、支出の把握がしにくいので、暫定的な措置として現金払いに移行してもらうことにしました。
ふたつめは、1週間単位で支出を管理していくこと。1週間分の食費の予算を決め、その金額をLさんが決める曜日に財布に入れて、1週間やりくりしていきます。毎週同じ予算で管理するので、お金が出ていくスピードも意識しやすいものです。
いつもは週の半ばで半分くらい残金があるのに、今週は3000円しかないのなら、お金を使いすぎていると判断できます。1週間がたち、もしお金が残っていたらどこかにストックします。そして新たな1週間には、また決まった金額を入れてはじめます。赤字になってしまったときは、翌週から前借りします。前借りなので、翌週は減った金額でやりくりすることになります。
難しいのは予算決めです。締めすぎるとつらくなってしまいますし、ゆるすぎると意味がありません。そこで適正額を決めるために、4週間、食費と日用品の金額を記録します。その合計を4で割って1週間当たりの予算を決めます。
結局、Lさんのご家庭ははじめから支出が多かったこともあり、4人家族ではありますが、1週間当たりの予算を1万8000円としました。
▼食費を週1万8000円に決めると劇的変化が
すると、お金の使い方が劇的に変わったのです。好きなものを好きな時に食べていると、あっという間に財布のお金がなくなります。無計画な買い物が減り、買い物に行く回数も減りました。足りないものがあっても「工夫して食べる」ということができるようになりました。
4カ月ほど経過し、すっかり予算の中で支出が収まるようになり、食費の使い方や食事の内容も安定しました。集計してみると、食費は当初の11万9000円から6万8000円へ減り、日用品も1万4000円から8000円ほどに減っていたのです。
さらに、この週の予算管理を意識したお金の使い方は、そうではない費目の支出にも相乗効果を生み、多くの費目で1000〜4000円ずつ削減することに成功しました。生命保険も保障内容を見直し、支出を削減できました。こうして、1カ月あたり7万4000円の支出削減を達成したのです。以前は毎月2万5000円の赤字家計でしたが、4万9000円の黒字家計へと転換したのです。
■月2万5000円の赤字家計が4万9000円の黒字に転換
お金を使うペースがつかめたので、クレジットカードの利用を再開してもよいと伝えました。ただ、「後払いになると管理する自信がない」と、ご本人たちがクレジットカード会社のブランドが付いた「プリペイドカード」を見つけてこられました。支払いはカードですが、即時に決済されるので支出の管理がしやすく、利用額の上限はチャージした分だけになるので、使い過ぎも自動的に防ぐことができます。支払いに応じてポイントも貯まるので、現金払いよりもお得です。
▼いかにして家計費を7万4000円減らしたのか?
【家計コストカット額 ランキング】
1位:食費 -5万1000円
好きなものを好きな時に食べていた。1週間の予算を組み、管理して削減。
2位:生命保険 -1万円
保障内容の見直しをした。
3位:日用品 -6000円
食費とともに、「1週間」分で予算管理をした。
4位:理容室 -4000円
美容室にこだわりがなかったので、安い店舗に変更した。
5位:通信費 -3000円
契約プランの見直しをした。
6位:交際費 -2000円
妻が友人と外食に行く回数が減った。
6位:嗜好品 -2000円
晩酌が減った。
▼「贅沢しているつもりはない」の「つもり」に要注意
水道光熱費や家賃などのように1カ月単位で支払いが発生するものと、食費や日用品のように毎日支払いが生じるものは、分けて管理したほうが効率的です。
また、毎日の食事は、極端に節約をするとストレスを生みます。頑張りすぎると、ある時期から反動で支出が膨らんでしまう「リバウンド」を起こすこともあります。無理のない範囲で支出を絞り、慣れていくことが大切なのです。
「贅沢しているつもりはない」の「つもり」に向き合えば、ムダな支出に気が付き、お金を貯められるようになれるかもしれません。
(家計再生コンサルタント、マイエフピー代表取締役、ファイナンシャルプランナー 横山 光昭)
Read Again http://news.livedoor.com/article/detail/13526945/
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