居酒屋「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーは3月15日、新業態店である「焼鳥つかだ」の概要を発表した。高級感ある店内でこだわりの地鶏を提供するスタイルで、3月22日に東京・中目黒に1号店をオープンする。想定する客単価は塚田農場より1000円高い4500円だ。今後は、焼鳥だけでなく同じようなコンセプトの炉端焼きやしゃぶしゃぶなどの店舗も出店する予定だという。
今回の新業態店を開発するにあたり、エー・ピーカンパニーの米山久社長はブランド戦略を強く意識した。クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏にロゴ、内装デザイン、メニューなどのプロデュースを依頼したのはそのためだ。
米山社長は「もともと、塚田農場は食のこだわりを打ち出していた。しかし、ここ4〜5年は従業員の接客が良いというブランドイメージになってしまった。上質な食材を提供する形態に回帰したい」と会見で述べた。「元気のある接客」「浴衣姿の女性従業員」で有名な塚田農場が食材の質を重視する方針に転換するのはなぜだろうか。
2007年に1号店をオープンした塚田農場の強みは、提携先の養鶏場で育てた地鶏を直接店舗で提供する「生販直結モデル」にあった。問屋などを通さないことで、手ごろな価格で質の高い地鶏を提供するスタイルが消費者に受け、店舗数は197店まで増えた(18年2月末)。
だが、近年はモンテローザの「山内農場」といった類似店が登場したことや、居酒屋離れが進んだことから苦戦を強いられていた。ここ数年、同社の外食事業における既存店の売上高と客数は前年比マイナスの状況が続いている。苦境を脱出するためには新たな戦略を打ち出す必要があった。
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外食産業のアルマーニを目指す
米山社長は会見でブランドという言葉を何度も強調した。
もともと塚田農場は20〜40代をメインターゲットとしていた。しかし、「若いアルバイト店員が接客しやすいのは20〜30代の客層。過剰なサービスの結果、客層が狭くなってしまった」(米山社長)。「浴衣で接客」というブランドイメージが強くなってしまい、肝心の地鶏の良さが伝わらなくなってしまった。
メニューやホームページで地鶏生産者の想いを伝えているのだが、説明が過剰になってしまい「何が売りなのか?」が伝わらなくなった。店舗をプロデュースした佐藤氏がシンプルなコンセプトを打ち出したのも、地鶏を際立たせるためだ。
こういった状況を打破するために、米山社長は「ちょい贅沢」というコンセプトを打ち出した。客単価が3500円前後のマス層を狙うのではなく、やや高価格帯のゾーンを狙う戦略だ。焼鳥という業態を選んだのもこだわりの食材をストレートに味わってもらうためだ。職人が焼鳥を調理するというイメージも強調している。
米山社長は、炉端焼きやしゃぶしゃぶの店舗を出店するにあたり、ファッションブランドの「アルマーニ」を意識したという。「エンポリオ アルマーニ」や「ジョルジオ アルマーニ」といったブランドがあるように、業態ごとに店の個性を強調する戦略だ。不振が続く既存店を新業態に転換することで、長期的にはマス向けの「塚田農場」ではなく高級な「つかだ」というブランドを広めたい考えだ。
外食産業のアルマーニになれるかどうかは、米山社長と佐藤氏の手腕にかかっている。
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