2018年3月2日金曜日

「安心」スバル 挽回なるか 体制一新 社長に中村氏

 SUBARU(スバル)は2日、中村知美専務執行役員(58)が社長に昇格し、吉永泰之社長(63)が会長兼最高経営責任者(CEO)に就く人事を発表した。無資格検査に続き、燃費データの書き換えも発覚。運転支援システム「アイサイト」で「安心」を売りに販売を伸ばしてきただけに、一連の問題の影響は大きい。体制一新で信頼を取り戻せるのか。

 2日、東京都内のホテルで開かれた記者会見。その冒頭、吉永氏が社内の自主検査にあたる出荷前の燃費計測で「データの書き換えがあった」と認め、「今は調査の最終段階。社内の報告で排ガスのデータの書き換えが実際に行われていたことを確認した」と述べた。品質については「検査基準値内で影響はないとの報告を受けている」としつつ「完成検査で起きたことと同じく企業風土の問題だ」とした。

 完成検査の問題が発覚したのは2017年秋。無資格者が検査に携わっていたほか、社内資格の試験でも試験官が解答を教えるなど、規範意識の低い、ずさんな運営が顕在化した。さらに社内のデータとはいえ、計測した燃費データを書き換える行為が繰り返されていたのだ。吉永氏は「的確な表現かわからないが、問題から逃げるのではないという姿勢を示したかった」とCEOを続ける理由を説明した。

 過去5年で世界販売台数を7割増やすなど急成長したスバル。その原動力の一つが、自動ブレーキなどからなるアイサイトを搭載した「ぶつからない車」だった。源流の飛行機メーカーを引き合いに、「絶対に落ちてはいけない安心のDNAがある」と説明。17年4月には社名を富士重工業からSUBARUに変更し「安心と楽しさを追求するブランドになる」とアピールしてきた。

 ただ、販売の伸びは問題発覚前から鈍化しつつあった。吉永氏は足元の経営状態について「ある意味での踊り場にいる」と説明する。そのなかで起きた安心イメージを揺るがす検査問題。吉永氏は「ものすごい勢いで販売が伸びたことで、経営資源を十分に整える間もなかった」とも話した。

 問題発覚を受け、スバルは17年末までテレビCMなどを自粛。販売店からは「来店客が半減した店もある」との悲鳴も上がった。熱心なファンから励ましの声が寄せられ、スバル社内には「ファンの信頼は根強い」との見方もあるものの、楽観論にひたっている状況ではない。

 今回の人事では近藤潤会長のほか、最高技術責任者の日月丈志取締役専務執行役員、製造系統括の笠井雅博取締役専務執行役員も交代する。7人を新任の執行役員として昇格させ、経営の世代交代を一気に進める。もちろん経営陣の刷新だけで信頼は回復できない。社内全体に危機感をどう浸透させ、どう持続させるかだ。

 次期社長の中村氏は記者会見で「スバルブランドとしての大きな方向性はぶれることなく継続したい」などと話したが、問題について語ったのはもっぱら吉永氏。「前の世代におまかせ」と距離を置かず、当事者意識を持って取り組む姿勢がまずは欠かせない。(湯沢維久)

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