2018年3月5日月曜日

トヨタなど11社が新会社 整備加速へ

 トヨタ自動車やJXTGエネルギーなど国内11社は5日、水素ステーションの整備を加速するため新会社を設立したと発表した。2021年度までに水素ステーションを全国で新たに80基整備する計画。燃料電池車(FCV)とともに高コストや規制が壁となり、思うように普及が進まない水素ステーションをオールジャパンでテコ入れする。

 新会社「日本水素ステーションネットワーク合同会社」は、トヨタ、JXTGエネルギーのほか、ホンダ、日本政策投資銀行などが出資し2月20日に設立した。

 社長に就いたトヨタの菅原英喜主査は東京都内で開いた記者会見で「インフラ事業者、自動車会社、金融投資家が連携する世界初の取り組みだ」と述べ、政府が掲げる20年度に160カ所、25年度に320カ所、30年度に900カ所とする水素ステーションの設置目標の実現に意欲を示した。

 だが、国内の水素ステーションは1月末時点で計画中も含め101カ所にとどまる。当初は15年に100カ所の整備を目指していたが、建設費用が1カ所で4億~5億円とガソリンスタンドの5倍もすることから3年遅れた。水素ステーションに有資格者を配置する義務や、設備に求められる安全基準が欧米より厳しいことがネックになっているとの指摘もある。

 FCVも苦戦中だ。トヨタは14年に市販車で世界初となるFCV「ミライ」を発売。走行中に水しか出さない環境性能に加え、満タンで約650キロ走り、水素もガソリン車並みの3分程度で補給できる「究極のエコカー」として普及が期待されたが、700万円強と割高なこともあり販売は伸び悩んでいる。

 今年1月末までのミライの世界販売台数は累計約5600台。ホンダが16年にリース発売したFCV「クラリティ」も同511台にとどまる。各国の環境規制が強まる中、世界のエコカー市場で先行しているのは、開発がより容易とされる電気自動車(EV)だ。FCVの開発に積極的なのは世界的にもトヨタとホンダくらいで、追随するメーカーは少ない。三菱東京UFJ銀行は、35年に世界の自動車販売台数の最大25%がEVになるとの予想を2月に発表したが、FCVは1%以下にすぎない。

 トヨタの寺師茂樹副社長は会見で「EVとFCVは対立軸ではない」と、両にらみで開発を進める考えを強調した。トヨタは20年代までに価格をハイブリッド車(HV)並みに抑えたFCVの販売を目指す。そのFCVの普及に欠かせない水素ステーションを、新会社がコスト削減や規制緩和でどこまで増やせるか、真価が問われることになる。【和田憲二、小倉祥徳】

キーワード・水素ステーション

 車載タンクの水素と空気中の酸素を反応させて生み出した電気でモーターを回して走る燃料電池車(FCV)に、燃料となる水素を補給する施設。その場で水素を製造する「オンサイト式」、工場などから水素を運び、固定した施設にためておく「オフサイト式」、大型トレーラーなどで水素や補給設備を持ち運ぶ「移動式」の3種類がある。水素の製造や圧縮、貯蔵、冷却、充填(じゅうてん)などを行うさまざまな機器からなり、安全確保のため「高圧ガス保安法」で取り扱いが規定されている。水素の利用を促す国家戦略のもと、ガソリンスタンドへの併設を可能にしたり、道路から補給設備までの距離を8メートルから5メートルに短縮したりするなど規制緩和が進みつつある。

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