リニア中央新幹線工事を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕された鹿島の担当部長大沢一郎容疑者(60)が、逮捕容疑となった品川駅や名古屋駅の工事について、入札を辞退する意向を他の大手ゼネコン三社に伝えた疑いがあることが関係者への取材で分かった。特捜部は、辞退の意向を伝えたことが、不正な受注調整に当たるとみて調べている。
鹿島幹部によると、同社は当初、品川駅と名古屋駅への参入を計画し、見積もりを作成するなどした。だが、いずれの工事も費用や人繰りの問題から途中で入札を断念した。
大沢容疑者は当時、大成建設元常務執行役員の大川孝容疑者(67)らと飲食店で情報交換をしており、逮捕前の特捜部の調べに対し「他社に『うちは取りにいかない』と言った可能性がある」と供述。大川容疑者を通じて、大林組や清水建設の担当者に辞退の意向を伝えたこともあり得るとの認識を示したという。
独禁法では、ライバル業者間で価格や特定の物件への受注意欲などについて情報交換する行為は、市場競争を損なう恐れがあるとして、談合とみなされる場合もあると公正取引委員会がガイドラインで示している。特捜部は、鹿島が工事入札を辞退する意向を事前に他社に漏らしたことで、名古屋駅や品川駅の工事入札の競争性が損なわれ、他社がより高い額で落札することにつながった可能性があるとみている。
工事を発注したJR東海によると、逮捕容疑となった品川駅の北工区は清水建設を中心とする共同企業体(JV)が二〇一五年九月に受注し、南工区は大林組のJVが同年十月に受注した。名古屋駅中央西工区は一六年九月に大林組のJVが受注した。
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