リニア中央新幹線の建設工事をめぐる大手ゼネコン4社の談合事件で、東京地検特捜部が鹿島の土木営業本部専任部長と、大成建設の元常務執行役員を逮捕した。
JR東海が発注した品川駅と名古屋駅の工事の入札の際、話し合いによって受注する会社を調整するなどした独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがある。2人はこれまでの任意の聴取に対して、容疑を否認しているという。
リニアの建設工事は総工費9兆円に上る国家的なプロジェクトだ。このうち3兆円は国が低利子で貸し出す財政投融資が充てられるなど公共性も高い。競争がゆがめられていたとすれば、そのツケは運賃にはね返ることになる。
大手ゼネコンは過去に談合事件での摘発が相次ぎ、決別宣言を出していた。それなのにこうした工事でまたも談合の疑いを持たれ、逮捕者を出す事態に至った。社会的責任は極めて大きい。
談合体質はいまなお根絶できていないのか。経営陣はなにを、どこまで把握していたのか。企業統治を含め、ゼネコン各社は業務のあり方をいま一度、抜本的に見直さなければならない。
一方でリニアの建設には、南アルプスのトンネル掘削といった難工事が多く、もともと受注できる企業が限られている。価格だけでなく施工方法などを総合的に評価する入札のため、発注元との十分な協議なども必要であろう。
こうした工事では、どのような行為が刑事責任にあたるのかはっきりしない面もあり、経済界などからは戸惑いの声も聞かれる。
4社のうち大林組と清水建設はすでに不正な受注を認め、公正取引委員会に違反を申告したとみられるが、大成建設は「嫌疑を受けている内容は独禁法違反に該当しない」とコメントしている。
特捜部と公正取引委員会は事件の全容解明を急ぐとともに、刑事訴追の対象となる基準を一定程度示していく必要がある。それが企業社会から談合を排除し、公正な競争を促すことにつながる。
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