2018年4月5日木曜日

インタビュー:成長の源泉は国内生保事業=清水日生社長

[東京 5日 ロイター] - 日本生命保険の清水博社長は、ロイターとのインタビューで、成長の源泉として引き続き国内の生保事業を中軸とするとの考えを示した。海外での買収や出資も進めていく考えを示したが、国内の収益を高めるための位置付けだと語った。

投資先企業の議決権行使については、中長期の投資家として行使基準から外れた企業に対しても対話活動を通じて改善を促し、すぐには反対しないとの方針を示した。

清水氏は、4月1日付で社長に就任。1983年に入社し、中枢部門の商品開発や主計、総合企画の部長を歴任。昨年の米資産運用会社TCWへの出資では交渉役も担った。

インタビューの主なやり取りは以下の通り。

――成長の源泉をどこに置くか。

「現在も国内の生保ビジネスで、9割以上の利益を上げている。今後の人口減少や、事業の海外進出により比率は下がるかもしれないが、引き続き国内の生保事業の利益が大半なのは変わらない。販売チャネルと商品でシェアを取る。国内の生保事業の収益力を高めるというのは、引き続き中心軸となる」

「そのうえで国内の生保事業を、保険の引き受け・運用と分けた時に、低金利環境の中で国内の資金を海外に持っていき運用力を上げていくことは、極めて重要なテーマになる。ここに海外の資産運用会社に出資する理由がある。これまでの海外進出への出資により、学ぶことがたくさんあった。海外進出はあくまで国内の収益を高めるためのものだ」

――保険契約者の利益を考えた時に、相互会社が海外企業に戦略出資する意味はあるのか。

「契約者利益につながる限り、つなげる確信を持って海外事業に投資しているので、何ら矛盾はない。マイノリティであれ、マジョリティであれ、海外の保険・運用会社に出資する最大の理由は、我々が参加することで経営のレベルや成長のカーブを上げられるためだ」

――国債への投資が難しい状態が続いている。

「昨年の4月に予定利率を引き下げたため、国債への投資余地は高まった。現在の国債の金利でも、引き下げた保険料であれば順ざやの関係だ。国債の順ざやを前提にした投資余地は広がった。ただ、負債全体の予定利率はまだまだ高い水準なので、本格的に国債市場に向かう状況ではない。引き続き海外やクレジットもの、成長新規投資に資金を振り向けている。今年度もその方向で進める」

――投資先企業に対する議決権行使について、どのような考えでやっているか。

「議決権行使基準を社内で定めて、開示もしている。経営計画など様々な視点から基準を設けている。基準から外れた企業に対しては、対話活動の中で、どのように考えているのかを伺い、先方から改善策を示されれば、そのことで信任を得られたと考え、しばらくフォローを続ける。基準に該当していなくても、すぐには反対しないという立場を取っている」

「議決権行使結果の反対比率という比較の中では、低い水準になっていると思うが、企業との対話の結果、先方からきちんと言質を得られているということが背景になっている。今後の課題としては、得られた言質をどのようにフォローしていき、どの段階でより厳しく意見を伝えるのか、もしくは何らかの行動に出るのか、これから積み上げていくことで判断、評価をしていきたい」

――議決権行使の基準そのものが低いのではないか。

「我々は中長期の投資家であり、ステークホルダーは保険契約者だ。保証している予定利率を上回るようなポートフォリオ全体の収益が、安定的に得られるかどうかが最も重要なことだ。その基準自体が他業態に比べて高いか低いかよりは、提供している保険商品や負債の特性に応じた基準であるかどうかが重要であると考えている」

──議決権行使結果の個別開示をしていないが、今後の方針は。

「日本版スチュワードシップ・コードは対話活動全体に対する重要性を訴えており、議決権行使はその最後の部門にあるものだ。この一部分だけに強くスポットが当たることにより、議決権行使の行動が形式的、あるいは機械的に流れることを懸念している」

「中長期の投資スタンスであるので、個別開示によって対話活動に支障が出るのかどうか、中長期の企業価値の向上にどのような影響が出るのかなどを見極めたい。今年度以降どのようにするかは、影響を踏まえてその都度判断していく」

*このインタビューは、3月12日に実施しました。

布施太郎 浦中大我 編集:田巻一彦

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