もう1つのフラッグシップ
シャープには「AQUOS R」というフラッグシップモデルが存在します。「AQUOS zero」は同じフラッグシップという立場ですが、AQUOS Rを置き換えるものではなく、並行して販売される製品。それぞれのブランドで異なるニーズに応えるものとしています。↑「AQUOS zero」。もう1つのフラッグシップシリーズとして、AQUOS R2と併売されます
AQUOS RシリーズはIGZO液晶ディスプレイの特性を生かした、120Hz駆動でなめらかなスクロール表現などが持ち味。最新モデルのAQUOS R2ではデュアルカメラを備え、動画と静止画を同時に撮影する機能も備えます。
それに対し、AQUOS zeroは有機ELの特性を存分に生かした製品と言えます。軽量化はもちろんのこと、操作性の面では有機ELの曲面形状を作りやすいという特徴を、指の関節の動きにあわせた湾曲型のディスプレイデザインとして活用。反応速度の良さを生かして、スマホゲームを存分に遊べるパフォーマンスを備えた点などがが特徴です。
チップセットは最新ハイエンド向けの「Snapdragon 845」で、シャープ初の6GBメモリ、128GBのストレージと、フラッグシップモデルにふさわしいスペックになっています。
「文庫本1冊分」という軽さ
市場を見ると、大画面のスマートフォンは軒並み200gに迫る重さになっている状況。例えばシャープのもう1つのフラッグシップ「AQUOS R2」は6インチで約181g。先月発売されたばかりの大画面iPhoneのiPhone XS Maxは6.5インチで約208gと、大画面化に応じて重さが増しています。AQUOS zeroは、6.2インチで約146gという重さは群を抜いて軽いもの。iPhone 8(4.7インチ、148g)よりもわずかに軽い一方で、画面サイズは1.5インチ近く大きくなっています。
↑左はiPhone X
↑「風船で浮きあがる」という、見た目にインパクトがある展示も
数値で比較するとイメージしづらいかもしれませんが、筆者も持ったときに「軽っ!」とつぶやいてしまったほど、サイズ感からは予想が付かない軽さでした。
スマートフォンAQUOSシリーズの開発を統括する小林繁氏は、「重さの目標300ページくらいの文庫本を基準として決めた。文庫本を読んでいて重さで疲れるという人がいない」と語り、長い時間持っていても疲れない重さを実現したと語りました。
↑小林繁氏(シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部長)
軽量化に特化したボディ設計
AQUOS zeroでは、有機ELディスプレイの軽量さという特徴を最大限に生かすように、ボディの設計も工夫されています。バックパネルにはアラミド繊維が編み込まれた繊維強化プラスチックを採用。フレームはマグネシウム合金を削り出しとして、バックパネルとフレームをあわせても30gという重さに抑えています。
一方で、軽量化のために犠牲となった点もあります。たとえばmicroSDスロットは非搭載で、アプリなどは128GBの内蔵ストレージの範囲でインストールすることになります。また、3.5mmジャックも非搭載となっており、イヤホン出力はUSB Type-C端子またはBluetoothを使う形になります。
有機EL向けの画質エンジンを新開発
「液晶のシャープ」を掲げてきたシャープですが、ディスプレイの画質の良さについては、有機ELでも重要な要素という位置づけ。有機ELパネルも自社で設計開発していることを強みとして、ディスプレイの開発段階から最終製品を意識した調整を加えているといいます。素子自体が発光する有機ELディスプレイは、「漆黒」や「深紅」といった深みのある色の表現に強いのが特徴です。AQUOS zeroではそれを生かすために、映像エンジン「リッチカラーテクノロジーモバイル」の見直しを行ったといいます。
↑ディスプレイの対応色域にあわせて単純にコンテンツの色域を拡大すると、のっぺりとした描画になってしまう(写真右の端末)
リッチカラーテクノロジーモバイルが何をしているのかというと、写真や映像などが持つ色域(色の範囲)を、ディスプレイが表現できる色域にあわせて拡大するという調整。単純に拡大するだけではなく、原色に近い色を大きく拡大し、中間色はほどほどに伸ばすことで、陰影表現が際立つ画作りになるといいます。
映像再生ではHDRのDolby Visionもサポート。立体音響のDolby Audioにも対応し、端末単体でも内蔵のステレオスピーカーを使って迫力のある音響再生ができるとしています。
充電しながらゲームも
ハイスペックなスマートフォンが共通の悩みとして抱えているのが、熱によるパフォーマンス低下。AQUOS Rシリーズではこの悩みを、放熱を促す設計によって対処しているとたびたびアピールされてきました。今回のAQUOS zeroでは、「充電中の放熱設計」に着目。充電したままスマホを操作すると、内部の発熱と充電時の発熱の両面に晒されます。シャープによると、一般的なスマートフォンの熱設計では、低温やけどが生じる危険がある過熱に至る場合があり、充電中はパフォーマンスを下げざるを得ないといいます。
一方で、AQUOS zeroのターゲット層となるコアゲーマーには、こうした充電しながらゲームをプレイするといった使い方は一般的になっていることから、この問題に熱設計による解決を試みられました。具体的には充電時に使うチップ「充電IC」を2つに増やし、並列に配列することで、熱の局所集中を防ぎ、分散しやすい構造としています。
展示端末では「ミリシタ(アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズというゲーム)」の高画質なPVを延々再生していたり、「Dolby Vison」のHDR映像をひたすら流していたりといった、"ヘビーな使い方"をされていたデモ機もありましたが、筆者が体験した限りでは、発熱を感じることは一切ありませんでした。
なお、AQUOS zeroのソフトウェアはAQUOS R2とほぼ同等となっており、プリインストールアプリも少なめ。ゲームに特化した省電力モードや通知オフ機能なども特に搭載されていません。
カメラは単眼「AQUOS R2相当」
AQUOS zeroのカメラについては、発表会のプレゼンテーションではほとんど触れられず、展示も存在しませんでした。会場で企画担当者にきいたところ「AQUOS R2の静止画カメラとほぼ同一のハードウェアを搭載している」とのこと。AQUOS R2の「動画を撮りながら静止画も記録する」という機能は使えないものの、それ以外はほぼ同等の機能となっています。
AQUOS R2の静止画カメラ相当なら、"トレンドのデュアルカメラ"ではないものの、AIによる被写体認識機能なども備えており、その画質は2018年のハイエンド端末にふさわしい水準と言えそうです。
↑AQUOS RシリーズやAQUOS senseシリーズでは前面にある指紋センサーは、AQUOS zeroでは背面にある
カラバリはあり得るのか
発表会場に展示されたAQUOS zeroは、「アドバンスドブラック」という一色のみ。カラーラインナップについては言及されませんでした。この「アドバンスドブラック」のデザインは、ひと言で表現するなら「無骨」。バックパネルにアラミド繊維を用いていることもあり、ハードボイルドな男性に似合いそうですが、万人受けするタイプとは言いがたいデザインです。
このアラミド繊維を採用したスマートフォンが、かつてソフトバンクから発売されていました。それは、2012年発売のモトローラ製「RAZR M SoftBank 201M」。2010年頃からスマートフォンを追っている筆者には、AQUOS zeroのバックパネルは、201Mのブラックを思い起こすようなデザインに感じられました。
「アドバンスドブラック」以外のカラーラインナップがあるのか、シャープの担当者の口から言及されることはありませんでしたが、繊維自体のカラーを変えることで、カラーバリエーションを作ることはできるとのこと。
このアラミド繊維という素材、カラーが変わればガラリと印象が変わります。実際、前述の201Mにはホワイトもあり、ブラックとは打って変わって優しい印象を受ける仕上がりになっていました。
シャープが採用しているアラミド繊維は、帝人の「テクノーラ」という商品。このテクノーラの商品ページでは、ゴールドやライトパープルといったカラーラインナップが確認できます。
カラーバリエーションがあるのかどうか以前に、現時点では販路なども明かされていません。希望的観測をするならば、今後どこかのキャリアの発表会で「AQUOS zero」が並んだとき、そのラインナップにしれっと新色が追加されている、という期待もできそうです。
尖ったスマホだが実用的
AQUOS zeroには、「シャープ製の国産有機ELディスプレイ」という印象的なトピックもありますが、軽さへのこだわりがそれ以上に際立っていた印象です。どんどん大画面になっていたスマートフォンですが、使う時はほぼ必ず手に持つもの。一日中持ち歩いていたら、そのうち数時間は手に重みを感じることになります。そうした状況で大画面ながら重さも5インチ台と同等まで抑えたAQUOS zeroは、目の付け所の良さを感じました。
Read Again https://japanese.engadget.com/2018/10/03/aquos-zero/
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