業績の大幅下方修正を発表したRIZAPグループ。瀬戸健社長はM&Aを凍結し、不採算事業からの撤退などの構造改革を決断した Photo:kyodonews |
「結果にコミットする」の宣伝文句で知られるRIZAPだが、RIZAPグループ(以下ライザップ)は業績でコミットできないことが明らかになった。2019年3月期の純損益を当初見通しの159億円の黒字から70億円の赤字に下方修正し、無配に転落する。ゲームソフトやCDの販売・買い取りのワンダーコーポレーションや、ヘアケア製品の企画販売のジャパンゲートウェイといった、ここ1年以内に傘下入りした企業の再建が計画通りに進まなかったためだ。
さらに注目されたのがM&A(企業の合併・買収)の凍結を発表したことだ。ライザップはM&Aで、売上高を16年3月期の539億円から18年3月期には1362億円まで拡大させてきた。この2年間で、約50社を傘下に入れた。
ライザップの手法は、業績の悪い企業を割安で買収し、そこで発生した「負ののれん」(純資産額より買収金額が下回った場合の差額)を割安購入益として、利益に計上するというものだ。IFRS(国際会計基準)で認められているため粉飾ではないが、見掛け上は営業利益のかさ上げになる。18年3月期の営業利益136億円のうち、74億円が割安購入益だった。
今回、M&Aの凍結を決定づけたのは、6月に最高執行責任者(COO)として招聘されたカルビー前会長の松本晃氏だ。8月後半から「まずは構造改革を優先して進めるべきだ」と主張してきた。
同社には金融機関や赤字会社から買収の話が引きも切らずに持ち込まれており、売上高と営業利益をかさ上げできる負ののれんを目当てに、M&A案件の評価が甘くなっていた面もあるだろう。現に、先述のワンダーコーポレーションは在庫の評価損を計上したが、音楽CDの不振は今に始まったことではなく当然予測できたはずだ。
問われる松本氏の手腕
積極的にM&Aを行ってきた18年3月期の有利子負債は768億円、自己資本比率は16.3%。財務面での脆弱さは明らかで、買収した企業の再建が進まず、収益を上げられなければ、株価の下落や資金繰りの悪化につながりかねない状況にあった。
そんな中、10月に突然、松本氏からCOOの肩書が外れ、「構造改革担当」の代表取締役となった。
「役員会で対立があったのは事実だが、健全なものだ。COOを外したのは組織のレイヤー(層)をシンプルにするためであり、瀬戸健社長とは99%同意見だ」と松本氏は言う。
市場では、「拡大路線を掲げた瀬戸社長は振り上げたこぶしを下ろせなくなっていた。松本さんの助言はいい言い訳になる」とみている。下方修正後、株価は2日続けてストップ安を記録した。本業での収益拡大やシナジー追求といった原点に立ち戻った経営ができるかが問われている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
Read Again http://ascii.jp/elem/000/001/776/1776128/?focus=2
0 件のコメント:
コメントを投稿