2018年11月26日月曜日

再送-〔焦点〕溝深まる日産とルノー、かじ取り役不在で3社連合の前途多難

((この記事は23日午後零時51分に送信しました))

[横浜市/パリ 23日 ロイター] - 日産自動車、ルノー、三菱自動車3社の会長を兼務してきたカルロス・ゴーン容疑者が22日の日産の臨時取締役会で、同社の会長職と取締役の代表権を解かれた。ルノーは解任決議の延期を求めていたとされ、早くも日産とルノーの間に溝が生じている。かじ取り役を失った3社の連合(アライアンス)のあり方がどのように変化するのか。その前途には不透明な霧が立ち込めている。

<ルノーの解任決議の延期要請を無視>

金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕されたゴーン容疑者の会長と取締役の代表権はく奪が提案された臨時取締役会は、横浜市の日産本社で22日午後4時半から始まった。この日の議論は、午後8時半まで約4時間に及んだ。

関係者によると、臨時取締役会前にルノーは、日産に解任決議の延期を強く求めていた。しかし、日産は全会一致による解任に持ち込んだ。4時間のうち、「相当な時間を割き、(ゴーン容疑者逮捕に至った)内部調査の結果が丁寧に説明された」(別の関係者)といい、ルノー出身の2人も賛成せざるを得なかったもようだ。

後任の会長は今回決めず、暫定的な会長も置かなかった。選出の透明性や独立性を保つため、社外取締役3人からなる委員会(委員長:豊田正和氏)が新たに設けられ、現取締役の中から候補を提案することにした。

投資資金や経費の私的流用も発覚し、会社を私物化していた実態が明らかになったゴーン容疑者。日産幹部の1人は「日産のステークホルダー全員に対する裏切り行為。絶対に許されない。解任は妥当」と話す。ただ、これまでの3社連合は、ゴーン容疑者の「鶴の一声」で意思決定されてきただけに、今後は意見がまとまらず、「時間がかかるのでは」と懸念する。

三菱自関係者は「ゴーン氏は経営者としては非常に優れているし、日産と三菱自が対立した時も、三菱自の意見を尊重してくれた」と、その存在感の大きさに言及している。

<日産とルノー、深まる溝>

日産の親会社であるルノーは、20日の臨時取締役会で、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を暫定トップとし、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)の解任は見送った。「解任するのに十分な情報や証拠がない」。ルノーの筆頭株主で15%を出資するフランス政府のこうした意向をくみ、疑惑の詳細が判明するまで先送りした。

フランス政府はもともと、ルノーの日産に対する影響力を強めたい意向があり、近年はゴーン会長の退任後を見据え、連合が解体しないよう不可逆的な関係構築を目指していた。一方、日産は対等な関係や経営の独立性維持を求め続けており、真っ向から異なる。

ゴーン容疑者の処遇も、ルノーは「見送り」。一方、同社が決議延期を求めたにもかかわらず、日産はこれを受け入れず「解任」。日産とルノー、フランス政府の溝はさらに深まる恐れがある。 <「より対等な関係」を模索したい日産>

検討を続けてきた日産とルノーの資本関係見直しも、さらに混迷を極めそうだ。現在の資本構成は、ルノーが日産に43.4%、日産はルノーに15%を出資する。ただ、ルノーは日産に対し議決権を持つが、日産はルノーに対して議決権を行使できないといういびつなものだ。

両社の資本関係は、1999年に経営危機に陥った日産をルノーが救済したことに始まるが、現在は立場が逆転し、ルノーを日産が支えている。ルノーの2017年度の純利益の約半分は、日産の業績が寄与する持分法投資利益からきている。

約20年もトップに君臨しながら、ゴーン容疑者は長年続いていた一連の完成検査不正で批判の矢面に立たず、役員報酬も自ら決めていた。3社間のあらゆる機能の共通化でも、ゴーン容疑者の息のかかったルノー出身者が責任者を務めるなど「役員選出も彼の思い通りだった」と三菱自関係者は振り返る。

別の日産幹部は「それぞれがより独立した形で、ウィン・ウィンの関係という原点に戻るべきでは」と指摘。ルノーが日産に対する出資比率を下げるなど「より対等な関係」を模索していくことを示唆した。

日産は15年、経営の独立性を担保する合意をルノーからとりつけているが、日産が15%から25%までルノーへの出資比率を高めれば、日本の会社法によりルノーが持つ日産株の議決権は消える。

<切っても切れない関係>

日産とルノーの両社はこれまで車種ごとの設計・部品の共通化、14年4月からは研究・開発、生産・物流、購買、人事の4機能の統合を進めてきた。100年に1度といわれる変革期を乗り越えるため、電気自動車や自動運転などの次世代技術でも共通化を進めており、3社は今や切っても切れない関係にある。 日産は22日、ルノーとのパートナーシップは不変であることも確認したと表明した。自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、日産が単独で生きていくのは厳しいとしつつ、連合の運営や資本関係の見直しなどで「相当もめるのでは」とみている。また、フランス政府の思惑から日産が離れていく場合、フランス政府が「何かしら手を打ってくるのでは」と予測する。

ゴーン容疑者は自らの晩節を汚しただけでなく、3社連合の未来にも大きな影を落とした。同業他社の幹部は、3社連合に漂う緊張関係を他山の石とし、こう指摘している。「資本を出し合うことが連合ではない。気持ちが一致していなければ何をやってもダメだ」――。 (白木真紀 取材強力:山崎牧子、久保信博、Daniel Leussink、Laurence Frost  編集:田巻一彦)

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