2018年1月31日水曜日

富士フイルム 米ゼロックスを買収 子会社と統合 事務機世界最大手に

 富士フイルムホールディングス(HD)は31日、米事務機大手のゼロックスを買収すると発表した。共同出資会社である富士ゼロックスをゼロックスの完全子会社にしたうえで、富士フイルムHDがゼロックス株の50.1%を取得する。買収後は売上高で米ヒューレット・パッカード(HP)を抜き、世界最大のオフィス機器メーカーとなる。市場が成熟するなか、開発や調達などを一体運営し世界展開を加速する。

 同日都内で記者会見した富士フイルムHDの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は、「世界最大規模の事務機メーカーになる」と買収の意義を強調した。買収後の連結売上高は約2.1兆円になる。富士ゼロックスは1962年に設立され、現在は富士フイルムHDが75%、ゼロックスが25%をそれぞれ出資している。

 まず富士ゼロックスが金融機関から約6700億円を借り入れ、その資金で富士フイルムHDが保有する自己株式75%を取得。ゼロックスの完全子会社となる。

 その後、富士フイルムHDが、ゼロックスの第三者割当増資を約6700億円で引き受ける。富士フイルムHDがゼロックスに50.1%出資する形態となる。18年第2四半期をメドに買収を完了する。経営統合後、新会社は富士ゼロックスの社名を引き継ぐが、「ゼロックス」のブランドは維持する。

 ゼロックスは自社の株主に25億ドル(約2700億円)の特別配当を実施。著名投資家のカール・アイカーン氏など「物言う株主」らの経営改善要求に応える。

 これまで富士ゼロックスはアジアを中心に営業する一方、ゼロックスは欧米とインドを担当してきた。製品開発や販売戦略もそれぞれ異なっていた。古森会長は、「統合することで、世界で一貫した戦略を展開できる」と強調。研究開発や調達、物流などの面でシナジーを期待する。統合効果は、21年3月期までに年間12億ドル(約1300億円)を見込む。

 複合機市場はペーパーレス化のあおりを受け、先進国を中心に市場が頭打ちだ。各社クラウド連携や人工知能(AI)を活用した新サービスの開発を強化し、収益の改善を急いでいる。

 富士ゼロックスは17年3月期まで2期連続の営業減益だった。昨年発覚した子会社の不適切会計問題が販売減少に拍車をかけ、売上・収益ともに低迷していた。同日は、国内外で1万人の人員削減を含む構造改革案を発表。3年間で720億円の構造改革費用を計上する。18年3月期は490億円を計上し、営業利益が同77%減の190億円に落ち込む見通しだ。

 一方のゼロックスも、主要市場だった米国での販売が低迷。16年度まで2期連続の営業減益で、業績が伸び悩んでいた。そうした状況を受け、筆頭株主である米著名投資家のカール・アイカーン氏らが、富士フイルムとの合弁事業見直しを迫っていた。

 ゼロックスは1906年創業の老舗だ。欧米市場を主力にしており、2016年12月期の売上高は107億ドル、3万7600人の従業員を抱える。世界でもいち早く印刷機器の製造販売を手がけ、なお高いブランド力を持つ名門企業だが、北米を中心にペーパーレス化の逆風に直面。2期連続の減益と業績が伸び悩んでいた。

 こうした状況に注目したのが、ゼロックスの筆頭株主で著名投資家のカール・アイカーン氏らだ。ゼロックスの時価総額は9千億円程度と低迷しており、アイカーン氏らはゼロックス側に経営トップの解任や富士フイルムとの合弁事業の見直しを迫っていた。

 古森氏は「今回の合併は利点があるのでゼロックスの株価も上がる。納得してくれるのではないか」と指摘する。現在1割程度のゼロックス株を持つアイカーン氏は、統合新会社でも5%前後の少数株主として残る見通しだ。ゼロックスを飲み込む形の富士フイルムにとって、今後は米国市場での株主対策も課題となりそうだ。

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