ヤマトホールディングス(HD)は31日、引っ越し子会社ヤマトホームコンビニエンス(YHC、東京)が料金を過大請求していた問題で、弁護士らによる社内調査委員会がまとめた報告書を公表した。報告書は、顧客企業に提示した見積額を「悪意で上乗せ」した例が計3億円弱あったと指摘。過大請求の一部は意図的な不正だったと結論付けた。一部支店では組織ぐるみで水増しが行われていた。
商品設計を見直すため、YHCは既に中止している企業向けに加え、個人向け引っ越しサービスについても全ての新規受注を当面休止する。ヤマトHDの山内雅喜社長は月額報酬の3分の1を3カ月間返上する。YHCの和田誠社長や歴代社長ら12人も処分された。社内調査委は今年6月末までの約8年間を対象に調べた。
ヤマトが7月、2年余りで約4万8000件、総額約17億円の過大請求を公表した際には、原因について「見積もりよりも荷物量が減ったのに見積額のまま請求した」と説明していた。意図的な水増しで余分に受け取った金額は17億円のうち、16%程度に上る。水増し分を含めた17億円全額を被害企業に返金する。
報告書によれば、水増し請求は全国11の統括支店のうち、5カ所で行われた。このうち、ある統括支店長は不正を認識しながら黙認。統括支店の傘下にある支店の一部では支店長自ら水増しを指示していた。一方、ヤマトHDやYHCの経営陣による指示は認められなかったとしている。
東京都内で記者会見した山内社長は、過大請求について「全社的にまん延していた。恥ずべき事態だ」と謝罪した。
ヤマトの引っ越し不正では、約20年前にNTT東日本も同様の被害に遭っていた。しかし、社内調査の対象期間は、データ不足などを理由に内部告発があった2010年以降にとどめた。記者会見に先立ち、ヤマトは国土交通省に報告書と再発防止策を提出。同省は8月の立ち入り検査なども踏まえ、行政処分を検討する。(2018/08/31-21:24)
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