日本と中国の業界団体が電気自動車(EV)向けの急速充電器の規格統一で合意したことで、各陣営が主導権を争っていた世界標準化に向けて大きく近づいた。IT関連企業などを巻き込んで世界のEV開発競争が激化しているが、日本メーカーにとって充電器の世界標準化は追い風になりそうだ。
「欧米勢が参加を望み、それなりの譲歩をするのであれば、枠組みに入っていただけることは歓迎だ」。日本規格の普及を担う「チャデモ協議会」の吉田誠事務局長は、東京都内で報道向けに開いた規格統一の説明会でこう呼びかけた。
急速充電器を巡ってはこれまで、日本と中国、欧米の3陣営が独自規格で主導権を争ってきたが、日中は規格統一で9割超のシェアを握ることになり、世界標準化の実現に向けて大きく前進した。
同協議会によると、今回の規格統一を持ちかけたのは中国側だった。今年2月、インドや東南アジア諸国への普及も視野に、日中で世界標準を目指すことを提案し、日本側が受け入れた。中国の巨大なEV市場を取り込みたい日本と、さらなる市場拡大に日本の技術力を利用したい中国の思惑が一致した形だ。
国際エネルギー機関(IEA)によると、EVと家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)の世界販売台数は2030年に現在の20倍以上となる2150万台に拡大する見通し。普及の加速には急速充電器の設置拡大も不可欠となる。
しかし、各国・地域で充電器の規格が異なれば、自動車メーカーもそれぞれの規格に合わせたEVの開発が必要となりコストがかさむなどのデメリットがある。このため各国・地域は世界標準化を目指しているが、他国が主導する規格を採用すれば、これまでの開発費用が無駄になるほか、自動車メーカーも新たな規格に合わせるための追加費用が必要になることから、主導権争いが続いてきた。
今回の規格統一によって日中は世界標準化に向け優位に立ち、欧米勢の出方が注目されるが、関係者によると、欧米勢はなお規格統一に難色を示しているという。日中は、インドや東南アジアを巻き込みながら、更に包囲網を広げる戦略だ。【松本尚也】
Read Again https://mainichi.jp/articles/20180823/k00/00m/020/121000c
0 件のコメント:
コメントを投稿