2018年8月23日木曜日

Netflixが国内初の価格改定、SD画質で月800円〜に値上げ

ネットフリックスはここ数年、本国の米国をはじめ多くの地域で料金を値上げしてきました。料金は国によって異なりますが、2015年の上陸から3年変わらなかった日本も、とうとう同じ水準に改定されたことになります。

価格は市場環境によって大きく異なるため、二国間で比べてもあまり意味はありませんが、昨年秋に値上げされた米国では下から7.99ドル、10.99ドル、13.99ドル。海外に比べて安かった日本のベーシックプランは値上げ後もまだ安い一方で、4K HDR+4ストリーミングの最上位プランは、日本向けのほうがやや高いことが分かります。(税込みの1944円は米ドル換算で現行17.6ドル程度)。海外の一部で試験的な導入が伝えられてきた、追加の最上位プラン「ウルトラ」がちょうどこの程度の水準でした。

今回の日本国内向け価格改定について特にリリースなどはありませんが、海外での価格改定も含め、ネトフリが値上げの理由として挙げてきたのはオリジナルコンテンツやローカライズの充実のため。

Netflixはドラマ『ハウス・オブ・カード』や『ストレンジャー・シングス』など、他のサービスでは見られない独自コンテンツ制作に莫大な予算を投じており、同じく独自コンテンツに注力するAmazonと並んで、アカデミー賞・エミー賞など高い評価を受けることももはや当たり前になりました。

完全にオリジナルな映画・シリーズに加えて、人気シリーズのスピンオフや続編がネトフリ独占で制作配信されることが多く、ファンにとっては目当てのために加入したつもりが他のコンテンツもおすすめされ抜けられなくなってしまう恐ろしい構造です。

日本向け・日本発コンテンツについても、テラスハウスや国内制作ドラマなどのほか、最近は『バキ』『デビルマン Crybaby』『聖闘士星矢』『GODZILLA』シリーズなど、特にオリジナルアニメに注力していることはご存知のとおり。

アニメについては日本での加入者増のために日本向けコンテンツを作ります、だけでもなく、ネトフリがサービスを展開する190か国に向けてローカライズしたうえで、各国でもサービスの大きな魅力となっています。

特に2017年に発表された怒涛の日本アニメ新作ラインナップや、国内有力スタジオとの提携以降、日本のファンにとってはある意味「世界に日本アニメ好きが増えてくれたおかげで、好きだった作家やシリーズの新作が見られて良かった、まっとうな制作費がついてありがてえ」という状態。

国内制作のアニメが各国にローカライズされて目玉コンテンツになる一方で、各国で制作された映画やドラマシリーズの非常に多くが日本語字幕や吹き替えで見られるのもネトフリの特徴です。

字幕ひとつとっても、ネトフリではルビの正しい方向(どっちの読みなのか混乱しないよう上下に分かれる)、縦書きと横書きの混在、「縦中横」等々、日本でアナログ時代に綿々と培われてきたお約束を大真面目に実装するだけでなく、字幕をデジタルで正しく扱える規格策定や、オープンソースのツールキットなどにも関わっています。

Netflixにおける日本語字幕の導入 – Netflix TechBlog – Medium

「ネトフリが映画の配信業だけでなく、自前コンテンツの制作で巨大な存在になっている」ことは、人気スター出演の映画や著名IPのアニメで広く知られるようになりましたが、同社しかこの規模では遭遇しなかった技術的課題の解決のため、動画圧縮規格やネットワーク配信技術、データサイエンスからAIまで、驚くほど多数の分野に取り組み成果物を公開しているゴリゴリの技術企業でもあることは、最近になってようやく周知が進んだ感があります。

Netflix Open Source Software Center

というわけで、もはや配信数など横並びの評価軸では比較しづらいなにか別の存在と化していること、何より他では見られない独自コンテンツが増え、ファンであれば嫌でも加入せざるを得ない点も、競合多数のストリーミング動画サービスでありつつ、各国で今回のような値上げに踏み切っても十分いけると判断した理由のようです。

日本のアニメのように「各ローカル市場攻略コンテンツであると同時に、海外配信でもインパクト」の例としては、最近はこんなニュースもありました。

『バーフバリ』新作がNetflixオリジナルで制作決定、少女シヴァガミの成長を描く前日譚シリーズ - Engadget 日本版

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