2018年8月24日金曜日

ふくおかFG・十八銀、来年4月統合 新銀行の責任重く

 経営統合が承認されたふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行は24日、福岡市内で会見を開いた。ふくおかFGの柴戸隆成社長は「これからが本番だ。地域経済の発展、取引先のサポートに全力を尽くしたい」と述べた。地元企業からは早速、経営支援の充実を求める声があがっている。地域からの協力があって悲願が成就した経緯を踏まえると、新銀行が背負う責任は重い。

記者会見する(右から)十八銀行の森頭取、ふくおかFGの柴戸社長、親和銀行の吉沢頭取(24日午後、福岡市)

記者会見する(右から)十八銀行の森頭取、ふくおかFGの柴戸社長、親和銀行の吉沢頭取(24日午後、福岡市)

 両社は10月に株式交換契約を締結し、12月に臨時株主総会を開いて正式に決める。統合後も県内で適正な競争環境を維持することを目的に「長崎県内中小企業向けの新規実行金利」など、複数の指標を定期的に開示する体制を今年度中に整える。

 2019年4月1日にふくおかFGと十八銀が経営統合。1年後にふくおかFG傘下の親和銀行と十八銀が合併し新銀行が誕生する。株式の交換比率といった詳細は今後詰める。重複する約50の店舗を統廃合し、500人規模の人員を捻出する。

 審査突破の決め手となった顧客の借り換え支援を決断するまでに時間を要したこともあり、統合の基本合意から2年半がたった。これについて十八銀の森拓二郎頭取は「借り換え支援はなんとかやらずにすまないかと考えて長期間かかった。専門の窓口も作ったが苦情はなかった。支持してもらえたと思う」と話した。

 地元自治体からは歓迎の声も。長崎県市長会の田上富久会長も「地域に安定した金融インフラが存続する道筋が見え安堵した」とコメントした。

 ただ、両社には地方創生の実現という次のハードルが待ち構える。離島の新上五島町でスーパーなどを展開する中村興産(長崎県新上五島町)の中村繁男社長は「現在取り組んでいる地元産の養殖マグロを活用した観光活性化は初めての試みで課題は少なくない。頼れる存在であって欲しい」と話す。

 長崎経済同友会の代表幹事で協和機電工業会長の坂井俊之氏は「金融機関は地域のイノベーションを支える大事な存在だ。統合でコンサル機能の充実が期待できる」と話した。

 一方で「2つの地銀が1つになり選択肢がなくなってしまう。中長期的には金利が上昇してしまうという懸念は払拭できない」(IT関連企業)と依然、慎重な声もある。公正取引委員会の深町正徳企業結合課長も、2度にわたり実施した企業アンケートの自由記入欄で「心配だという人が多かった」ことを明かした。ふくおかFGと十八銀にはこうした懸念の払拭に真摯に取り組むことも求められる。(新井惇太郎、三島大地、古宇田光敏)

●記者会見 一問一答

 3社の首脳の記者会見での主なやり取りは以下の通り。

 ――統合効果をいかに発揮しますか。

 柴戸社長「足元では従来の店舗での取引が重荷になっており、フィンテック企業などの参入もある。将来の環境変化に対応するために重複店舗は統廃合して、利便性を維持したまま顧客サービスに振り向ける」

 ――どのように企業を支援しますか。

 柴戸社長「我々の貸し出しが地域の成長の肝となる。単なる融資に留まらず、コンサルティング営業やビジネスマッチングなどの支援にも力を入れる」

 親和銀行の吉沢俊介頭取「新しい産業を興すことも、個別の企業の可能性を引き出すこともある。磨けば光るものがたくさんあると思うが、現状は専門的なサポートなどができる行員が限られている。それが統合で可能性が広がる」

 ――経営統合のために債権譲渡にまで踏み切ったことへの思いは。

 柴戸社長「債権譲渡については(強制されるのではとの)誤解があった半面、統合をなし遂げて欲しいと協力的な顧客もいた。貸出金を他行に持って行くのは苦渋の決断だった」

 ――長崎では「福岡の銀行になるのでは」という懸念もあります。

 森頭取「統合は長崎のために役に立つ銀行を作るためのもので、親和銀と同じベクトルに向かっている。人口減少で衰退している長崎の希望のためには、我々が融合して同じ目的のために力を尽くす必要がある」

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