ヤマトホールディングス(YHD)とヤマトホームコンビニエンス(YHC)は8月31日、引越サービスでの不適切な請求に対する「外部の独立した専門家で構成する調査委員会」の調査報告書を発表した。
調査報告書は75ページにわたる膨大なもの。YHDの山内社長は調査報告書を受け「不適切な請求の根本的な原因は引越サービスの商品設計にあった。それに付随して、教育、組織体制、社員の処遇面、内部通報制度、内部監査等の不備が合わさり、不適切な請求が発生した」との認識を示した。
商品設計ではYHCの引越サービス商品のうち、「引越らくらくタイムリーサービス」と「単身引越ジャストサービス」の2商品が該当。このうち、「引越らくらくタイムリーサービス」では適用約款に見積時の料金に差異が生じた場合は修正(精算)を行う旨規定されている。
この規定がほとんどなおざりにされ、今回の不適切な請求を生んだとしている。精算する規定についてはほとんどの社員が認識がなかったことも明らかになった。
不適切な請求は2016年5月1日から2018年6月30日に全3367社の法人からYHCが受注した社員向け引越サービス約12万4000件、総額約165億円のうち、不適切な請求が2640社、計4万8000件あり、その総額は約17億円だった。
不適切な請求17億円のうち、悪意で上乗せした事象は、約16%と推認している。悪意の判断基準は「割引が大きい事、作業集中による臨時戦力の使用などのコスト的にもあわないため上乗せした」「体制に不安があるために集中する日はにはお断りするために上乗せした」「他社の見積金額がわかっており、上乗せしても取れると思った、上乗せして断りたかった」「引越アドバイザー・作業員の処遇(インセンティブ)を上げるために上乗せした」といったもの。
その他の不適切な請求は、引越での不確定要素を考慮し、積み残しを回避するため見積に余裕を持たせる、見積後の家財処分等の事情変更などによる不確定見積書が修正されなかった結果、不適切な請求となった、としている。このうち、過小請求の案件もあったという。
11ある統括支店のほぼすべてで不適切な請求が確認されている。
特に、四国統括支店での上乗せ請求については、高知支店が2018年4月から5月にかけて、特定の法人顧客から121件の社員引越を受注したが、そのうち119件において、支店長や引越アドバイザーが一体となり、上乗せ見積が行われたことが認められたとしている。組織的ではないとしながらも、統括支店長が黙認していたと認めている。
山内社長は「これらの調査報告に基づく委員会の提言を受け、再発防止策の提言を作成した。現場の第一線の社員の声も聞かずに運用に難度のある商品を設計し、商品の検証もせずに進めていたことは重大な問題。引越の2商品については新しく再設計した商品が誕生するまで新規受注を休止する。失われた信頼を取り戻すのはたやすくないが、グループとして総点検し、少しでも信頼を取り戻せる努力をしていきたい」と話した。
なお、処分については、2008年に遡ってのYHC社長のほか、2名が降格処分、6名が減俸とした。
YHDは子会社に対するガバナンスの不備を厳粛に受け止め、木川会長、山内社長他、計5名が月額報酬1/3~10%減まで自主返納する。
Read Again https://lnews.jp/2018/08/k083116.html
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