長崎県下「1強」の地方銀行が誕生する。
公正取引委員会は、長崎県佐世保市に本店を置く親和銀行を傘下に持つ、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と、長崎市に本店を構える十八銀行の経営統合を承認。排除措置命令を行わない旨を通知した。2018年8月24日の発表。ふくおかFGは19年4月に十八銀行を傘下に収め、2020年4月に十八、親和の両行を合併させる。
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金融庁の思惑どおり? 長崎県は「地銀1強」に……
不当な貸出金利の引き上げ、第三者委員会での監視が条件
マイナス金利政策の影響と企業融資の伸び悩みで収益状況が悪化する地銀にあって、「ふくおかFGと十八銀行」の経営統合は注目の的だった。
ふくおかFG傘下の親和銀行と十八銀行が合併すれば、長崎県内の中小企業向け融資のシェアは75%にものぼる。公正取引委員会は、「1強」では公正・公平な競争環境が維持されず、「顧客が不利益を被る懸念がある」と主張。経営統合に「待った」をかけていた。
これに、ふくおかFGと十八銀行は1000億円弱の貸出債権を、ライバルの金融機関に譲渡して融資シェアを下げることを公取委に提示。あわせて、新たに実施する中小企業向け融資の金利を開示するなど、貸出金利の不当な上昇を防ぐ仕組みも示した。
公取委によると、ふくおかFGと十八銀行が長崎県内に持つ貸出債権を、周辺の地方銀行など約20金融機関に譲渡することでシェアは65%に低下。債権を譲り受けた20の金融機関が、これをきっかけに長崎県での取引拡大につなげることで競争力が維持されると判断。
また、ふくおかFGと十八銀行がほぼ融資を独占する壱岐市や対馬市など離島では、公取委が「複数の金融機関による競争維持は困難」とし、貸出金利の不当な引き上げなどが発生しないよう、第三者委員会による監視、報告を条件とした。
とはいえ、こうした措置が思惑どおりの効果を発揮するかどうかは未知数だ。
情報筋によると、「落ち着くところへ、落ち着いただけ」と指摘。現在、銀行では「融資を伸ばせ」と号令をかけているのだから、今ある融資先を手放したくない。むしろ、取引のある企業の資金需要を掘り起こし、「もっと貸したい」というのが本音のはずという。
一方の取引先のほうも、銀行から頼まれれば、仕方なく応じることになるから、結果的に債権譲渡は一時的な「その場しのぎ」でしかない。金融庁が再編促進に舵を切っていて、「公取委もこのまま放っておくわけにもいかず、体裁を整えたといったところ」との見方だ。
20年前の構想が復活したワケ
金融庁は地銀再編を後押しする。今年4月に発表した「地方金融のあり方についての報告書」によると、東京都を除く46道府県の地銀の経営状況を調べたところ、長崎県を含む23県で、将来的に地銀が1行しかなくても、存続が難しくなると指摘していた。
その根底にあるのは、「スーパーリージョナルバンク」構想だ。金融危機で地域金融機関が相次いで倒産する一方で、オーバーバンキング(銀行が過剰に多いこと)が指摘され、経営統合による再編で、県などをまたいだ大型地銀の創設が促されていた2000年ごろ、当時の小泉政権が唱えた道州制の導入とあわせて検討された経緯がある。
金融危機をどうにか乗り切り、また道州制の議論も下火となっていったことで、沈静化していたが、2016年2月以降のマイナス金利政策の影響による資金運用難と、企業向け融資の伸び悩みで、再び、地域金融機関の「再編」がくすぶりはじめた。
地銀は多くの地域で1県2行体制にある。「ふくおかFG+十八銀行」の経営統合を突破口に、全国の地銀の中でスーパーリージョナルバンクへと加速度的に突き進むところが出てくる可能性は大きい。20年近く前の構想が、どっこい「生きていた」というわけだ。
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