奨学金の保証人は本来、未返還額の半分しか支払う義務がない。この法律の知識があれば半額にし、知らなければ全額を回収する。自ら進んでは伝えない――。日本学生支援機構がこうした回収手法を続けていることがわかった。
封書を開けると、見慣れない漢字の列が目に飛び込んできた。
「支払督促申立予告」
福島県に住む男性(64)はうろたえた。下には7桁の数字が並んでいる。日本学生支援機構が約400万円を一括で払うよう求めていた。応じなければ、男性に督促するよう裁判所に申し立てるという。3年あまり前のことだった。
「こんな大金、とても払えない」
男性は、姉の娘が東京の大学に進んだ18年前、奨学金の保証人になった。ただ、その記憶さえほとんどなかった。長く音信が途絶えていた連帯保証人の姉と連絡をとると、めいは国際結婚して日本を離れ、姉は家計の苦しさから延滞を続けてきた、という。
自分がかぶるしかないのか。でも、とても払える額ではない。定年退職して2年。家までは取られないだろうが、このままでは老後の設計が狂う。争うことができるのか。男性は、奨学金問題に取り組んでいる弁護士に相談した。
宮城県の千葉晃平弁護士は、奨学金返還をめぐる保証人からの依頼は初めてだった。民法関連の文献を読み直すうち、ある言葉に目を留めた。
「分別の…
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