2018年11月22日木曜日

日産、ゴーン会長を解任 ルノーと主導権争い

日産自動車は22日、カルロス・ゴーン容疑者(64)を会長から解任した。19日に有価証券報告書の虚偽記載の疑いで逮捕され、日産の内部調査でも私的流用など不正行為を確認。現職には適任でないと判断した。ゴーン元会長は強力なリーダーシップで仏ルノーや三菱自動車との連携を深める一方、入念に権力を集中させ3社連合に君臨した。水面下では「ゴーン後」の主導権をにらみ、日産やルノー、仏政府も巻き込んだ綱引きが本格化する。

日産は午後4時半から臨時の取締役会を開いた。取締役9人のうち勾留中のゴーン元会長と、同様に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は欠席。西川広人社長ら7人の取締役で決議した。

約3時間半に及んだ取締役会では、ゴーン元会長らの不正の手口や証拠を詳細に示した。7人のうち2人はルノー出身だが、全会一致で解任を決議した。後任の会長職は12月にも開く次回取締役会で、社外取締役らを中心に人選する。

ルノーはゴーン元会長の最高経営責任者(CEO)職について解任を見送っている。筆頭株主の仏政府が「解任するだけの情報がない」と意見したためだ。今回、詳細な証拠を示しルノー出身者も賛成に回ったことで、ルノーの判断に影響する可能性がある。

日産の取締役の顔ぶれも焦点となる。ゴーン元会長らが抜ける2席にルノーは後任を派遣し、日産の意思決定に影響力を残す道を探る可能性がある。代表権を持つ2人の解任で、代表権を巡る争いも想定される。

一方、3社連合も不安定さを増す。「3社のアライアンスは続けていく」。22日の取締役会では西川社長がそう述べたが、参加者は無言でうなずくだけだったという。3社は今後、連合の運営手法の見直しなど難しいかじ取りを迫られる。

新車開発や部品調達など重要事項を決める3社連合の実権はオランダに本社を置く統括会社「ルノー日産B・V」が握る。日産とルノーの折半出資だが、トップは「ルノーの最高経営責任者(CEO)が務める」との内規があるとされる。ルノーCEOのゴーン元会長がトップに君臨した。

3社のトップらが月1度ほどのペースで集まる会議体があるが、取締役会のように多数決で決めるのではなく、ゴーン元会長が事実上、決定権を握ったという。日産のインド工場での生産が固まっていた主力小型車の生産がルノーの仏工場に移るなど、ルノーに恩恵を与えるような経営判断に日産社内の不満も強い。

ゴーン元会長がルノーのCEOからも外れれば、ルノーの後任CEOが統括会社を率いるのが慣例だ。しかし日産側が内規の見直しを求める可能性もある。さらに日産側が「対等な関係」を求め、ルノーへの出資比率が15%と小さく議決権もない現在の資本関係の修正に動く事態も想定される。国内の雇用や産業政策を優先させるためルノーに主導権を持たせたい仏政府の思惑も絡み、駆け引きが本格化する。

3社の連合は相互の持ち株比率が過半に満たない不安定な側面を持つ。あいまいな統治形態がゴーン元会長君臨の余地を生み、今回の不正を可能にした。機能不全に陥っていた企業統治の立て直しが急務だ。自動車産業は自動運転など技術革新の転換期にある。主導権争いで改革が遅れれば、競争から脱落する。

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