富士通株式会社は26日、2017年度上期(2017年4月~9月)の連結業績を発表した。
売上高は前年同期比0.8%増の1兆9232億円、営業利益は同39.3%増の280億円、税引前利益は同188.0%増の593億円、当期純利益は同266.5%増の434億円となった。
上期の増収については、円安による増収効果で270億円増、国内サービスやユビキタスを中心とした事業成長で140億円増となったが、ニフティのコンシューマ事業売却影響で260億円減。
増益については、ニフティのコンシューマ事業などの資産売却影響で160億円増となったことが大きく、ネットワーク事業での減収影響などで10億円減、海外子会社の法的紛争手続きの結果に伴う損失で70億円減となったのをカバーした。
そのほか、金融損益では、富士電機との株式持ち合い見直しに伴う売却益の273億円に、上期に生じた円高進行による為替差損の負担減をあわせて、308億円の増益となった。
富士通 代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏は、「売上高はニフティのコンシューマ事業の売却影響を除くと、テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションともに増収となった。営業利益においては、次世代クラウドやセキュリティ分野への先行投資が拡充したことに加え、川崎地区を中心に事業所の再配置を進めた影響があった」とした。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比0.6%減の1兆41036億円、営業利益は同15.8%減の448億円。
そのうちサービス事業の売上高が前年同期比0.5%減の1兆1999億円、営業利益が同9.8%減の428億円。また、サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比0.3%増の4671億円、インフラサービスの売上高は同1.1%減の7328億円となった。システムプラットフォームの売上高は前年同期比1.2%増の2103億円、営業利益は同65.0%減の20億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は前年同期比2.6%増の1112億円、ネットワークプロダクトの売上高は同5.2%減の991億円となった。
「ソリューション/SIは、金融分野での大規模プロジェクトや、公共分野におけるマイナンバー商談のピークアウトなど、マイナス要因があったが、製造、流通、サービス分野に加えて、ヘルスケアなどが伸長し、高水準だった前年実績を上回った。また、インフラサービスは、ニフティの売却影響を除く本業では2.4%の増収となっている。国内はアウトソーシングが堅調に推移。海外は為替の円安効果を中心に増収となった。システムプロダクトは、前年に好調だったIAサーバーがやや低調であったが、高採算のメインフレームが伸長し、全体では増収。ネットワークでは、前年度第2四半期、第3四半期に携帯電話基地局の引き合いが強かった反動を受けたほか、競争環境の厳しさが増したことが影響している。また、北米向け新製品の立ち上げが遅れ低調だが、開発費負担の減少が見られている」とした。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比5.2%増の3206億円、営業利益は同17.2%減の107億円。PC事業は、国内ではハイスペック品が、個人向け市場に受け入れられたほか、海外では為替影響を中心に増収となったとし、「PC事業全体では、円安によるドル建て購入部材のコストアップ、キーコンポーネントの市況価格の上昇などによる利益へのマイナス影響があったが、ハイスペックPCの販売が計画を上回り、それによってカバーした」という。
なお、レノボに対するPC事業の売却については、「少なくても、日本では勤労感謝の日、米国でいえば、サンクスギビングディはゆっくり過ごしたい」と発言し、11月中旬までには売却が正式に発表できるとの見通しを示した。
デバイスソリューションは、売上高は前年同期比3.7%増の2794億円、営業利益は前年同期から70億円増の73億円となった。そのうち、LSIの売上高は前年同期比8.6%増の1439億円、電子部品は同1.0%減の1360億円となった。
「スマートフォン向け製品の所要回復に加えて、円安による増収効果もあり、LSIを中心に増収となった。前年に実施した、工場設備の法定点検実施による操業停止の影響がなくなったことで増益になった」とした。
通期見通しは据え置きに
一方、2017年度(2016年4月~2017年3月)通期業績見通しは据え置き、売上高は前年比0.8%減の4兆1000億円、営業利益は同57.5%増の1850億円、当期純利益は同63.9%増の1450億円としている。
「セグメント別営業利益見通しについては、サービスでは欧州におけるビジネスモデル変革の効果を出していくことが大切である。しっかりと効果を出ていきたい。システムプラットフォームでは、ネットワーク機器が重要であり、国内キャリアの基地局投資や、北米では第4四半期までに新製品立ち上げを織り込んでいるが、まだ不透明感がある。ユビキタスソリューションは、上期の所要は前年を上回ることができたが、この状況が続くことを期待しているものの、部材価格の動向を含め、市場環境に変化が生じないか注視している。デバイスソリューションは、円安の恩恵はあるが、市況変動のリスクがある」と述べた。
また、「富士電機の株式売却益は、7月時点での予想には盛り込んでいないが、現在推進しているビジネスモデル変革の影響について、金額、計上時期ともに不透明であり、当期純利益は7月公表値を据え置く」とした。
富士通では、経営方針のなかで、「形を変える」ことを打ち出し、すでに主要SE会社3社の統合や、欧州におけるデジタル化に向けた構造改革を実施してきたが、「今年度はニフティのコンシューマ事業の売却などに加えて、会津の半導体製造会社の再編、ソリューションSIの上場会社である富士通ビー・エス・シーの完全子会社化を進める。富士通ビー・エス・シーとは、人材および技術交流を深め、SIビジネスの収益性向上、デジタル化への対応を強化し、成長性を高める。形を変えるための次の改革も必要であると感じており、粛々と進めていくことになる」と述べた。
なお、神戸製鋼の品質問題については、「神戸製鋼の部品は、海外製造子会社でわずかに買った経緯はあるが、電子機器の金属部分であり、すぐに品質問題を起こすことは考えていない。大きな影響はない」とコメントした。
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