2017年10月27日金曜日

原発自主避難の賠償、二審で半減 原告「絶望した」

 東京電力福島第一原発の事故後、避難指示がなかった福島県郡山市内から自主避難した元会社経営者の40代男性と妻子が、東電に休業補償や慰謝料など計約1億8千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁(佐村浩之裁判長)であった。高裁は、一審が東電の賠償責任を認めた判断を維持した一方、賠償額を約3千万円から1615万円に半減させた。

 飲食店運営会社を経営していた男性は2011年3月の事故後、妊娠中の妻と子ども2人と県外へ避難。その後、京都市で生活し始めた。一審・京都地裁は、男性が代表取締役を辞めざるを得なかったことや、避難後にうつ病と診断されたことは原発事故が一因だと認定。東電に計3046万円を支払うよう命じた。

 高裁での賠償額半減は、事故がなかった場合に男性が受け取れたはずの報酬額と、うつ病で働くことができなかった期間とを、それぞれ減らして認定したのが主な要因だ。

 地裁は男性の過去の報酬額をもとに得られたはずの月額報酬を76万円と算出し、うつ病による就労不能期間は事故から15年11月までとした。だが、高裁は「会社の経営は必ずしも安定的でなく従前と同水準の報酬を得られたとは認めがたい」と述べ、月額45万円が相当とした。さらに「うつ病が回復する期間は2年以内が95%」などとする東電側の主張を採用し、就労不能期間を13年11月までに前倒しした。

 自主的な避難に対する慰謝料も一審判断から減額した。高裁は「男性は当初、11年秋か年内に帰るつもりだった」と指摘し、男性については11年10月末、妻子は翌12年8月末までしか自主避難の合理性は認められないと判断した。

 原告代理人の井戸謙一弁護士は「低線量被曝(ひばく)の危険が指摘される中、年間20ミリシーベルトでも親が被曝を避けることの合理性を判断してもらいたかったが、主張が退けられた。男性の妻は『裁判所に絶望した』と話していた。極めて不当な判決だ」と述べた。

 原発事故をめぐっては、避難者らが東電や国を相手に少なくとも全国21の裁判所(原告約1万2千人)で集団訴訟を起こしている。全国の原発避難者訴訟を支援する「原発事故全国弁護団連絡会」の代表世話人・米倉勉弁護士は「被害の実態に目を向けず、仮定や統計をもとに損害額を減少させた判決で非常に問題がある。他の避難者訴訟の先例になるべきではない」と批判した。(釆沢嘉高)

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