2017年10月27日金曜日

商工中金の不正 完全民営化で出直し図れ

 政府系金融機関である商工組合中央金庫(商工中金)の不正融資は、ほぼ全ての店舗で繰り返され、800人以上の職員が処分を受ける。

 民業補完に徹すべき役割を著しく逸脱し、自らの存在意義を高めようとして事業拡大に走った結果である。

 不正を隠蔽(いんぺい)する組織の体質には大きな問題がある。政府が2回目の業務改善命令を出し、経営体制の解体的な出直しを求めたのは当然だ。公的金融のあり方が根本から問われる事態だと受け止めなければならない。

 組織を抜本的に見直すには、融資業務や店舗の縮小など経営形態の改革が不可欠だ。先送りされてきた完全民営化も真剣に検討する必要がある。

 元経済産業事務次官の安達健祐社長が辞意を表明し、後任は民間から起用するとした。職員を不正に走らせた歴代社長らの経営責任はもちろんだが、監督官庁である経産省の責任は免れない。世耕弘成経産相らが給与を自主返納すれば済む問題ではあるまい。

 大規模災害などで一時的に業績が悪化した中小企業に向けた融資が不正の舞台となった。好調な企業の決算などを改竄(かいざん)し、業績が振るわないように偽って融資していた。現場に過度なノルマを課したというが、ほぼ全店で多数の職員が恒常的に不正に手を染めていた実態は異常というほかない。

 税金を原資とする低利融資で民間の金融機関と競い合い、貸し付けを増やしていた。地方銀行の優良顧客を横取りした事例もあった。不正な手段で民業を圧迫する行為は、公的金融の存在を自ら否定したに等しい。

 政府は、商工中金のあり方を見直す有識者会議を設置する。管理職が不正融資を見て見ぬふりをするなど、組織的な隠蔽も明らかになった。企業統治を確立し、法令順守に向けた意識改革を図ることが求められる。

 政府が筆頭株主ながら、半官半民というあいまいな経営形態を改めるべきだ。2年前の法改正で完全民営化は無期延期となったが、この際、政府の保有株を売却して完全民営化を図るなど、抜本改革に向き合う必要がある。

 政府系金融全体のあり方も再検討すべきだ。必要性が薄れた制度融資は迅速に廃止するなど、民業補完の原則の徹底に努めなければならない。

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