安心・安全が看板のメーカーで何が起きたか
記者会見で頭を下げるSUBARUの吉永泰之社長。完成車の無資格検査を発表した(撮影:尾形文繁)
「安心・安全にかかわることで、お客様に不安を感じさせることは、『SUBARU』ブランドとして最もやっていけないことだ」
10月27日、スバルは記者会見を開き、群馬製作所(群馬県太田市)で、日産自動車と同様、無資格の検査員による不正な完成検査が行われていたことを発表した。無資格検査は30年以上も前から常態化。吉永泰之社長は2時間20分にも及んだ会見で、反省の言葉を繰り返した。
10月30日に国土交通省に社内調査結果を報告し、無資格検査で出荷・販売されて1回目の車検を迎える前の車両、25万5000台を対象にリコールを届け出ることにしている。中には、トヨタにOEM(相手先ブランド製造)で供給をしている人気スポーツカー「86」も含まれる。運転支援システム「アイサイト」に代表されるように、安心や安全を消費者に強く訴求してきたスバルだが、クルマづくりの基本ができていなかった。
「まずいという認識がないまま」30年以上
スバルの群馬製作所(群馬県太田市)で行われている新車の完成検査。30年以上、無資格の従業員が検査業務に携わっていたことが発覚した(編集部撮影)
スバルで行われていた無資格検査とはどのようなものか。同社が国交省へ届け出ていた規定は「社内試験に合格した完成検査員が完成検査を行う」というものだ。
だが、実際には、完成検査員の資格を取るために研修中の従業員も検査を行っていた。検査の運用を定めた業務規定では、「監督者の監視下では、知識と技能を100%身につけたと判断された従業員であれば、完成検査の業務に従事できる」と定めていたからだ。
国に届け出た規定と社内の規定が矛盾する状態は30年以上まかり通っていた。スバルは社内調査を行った10月1日時点で、無資格で検査を行っていた従業員が4人いたことを明らかにした。過去をさかのぼると、平均で8人、最大で17人の従業員が無資格検査を行っていたという。完成検査の有資格者は会社全体で245人おり、同社は無資格検査の原因としての人員不足を否定する。吉永社長は「完成検査は非常に重要な行為だが、社内ではこれでまずいという認識がないまま、過ぎてしまった」と話す。
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