2018年1月3日水曜日

ビットコインはバブルか? 作家・板谷敏彦

 話題の仮想通貨の代表、ビットコイン。1ビットコイン当たりの価格は昨年12月16日、年初来約20倍の220万9000円にまで急上昇したかと思うと、その後は乱高下して真っ逆さまに下落中のように見える。欧州連合(EU)の金融規制担当トップは監督強化の方策を模索し、ビットコインの急騰は「バブル」の兆候を示していると警告した。また、英国の規制当局は、ビットコインを買った投資家は全てを失う危険を覚悟すべきだとし、米国の証券取引委員会も日銀総裁も投資家保護の観点から同様の警告を発している。

 ◆大きい価格変動

 米JPモルガン・チェース銀行のジェームス・ダイモン会長は政府がサポートしないような通貨は価値がないとビットコインの批判を続けているし、私の周囲でもビットコインは価格変動性が大きすぎて通貨としては不適切であるという意見が多い。だから今回のように一旦下がると、ほら見たことかとなる。

 しかし通貨として不適切であるからと言って、投資対象として不適切であるとはかぎらないし、(純金だってそうだが)現実にビットコインで買い物(決済)ができる店も増えている。

 日本ではクレジットカードの手数料が高いので、1%程度の決済手数料で済むビットコインは店側としては歓迎なのだそうだ。店側は円換算されたビットコインで支払ってもらい、仮想通貨を介在する為替リスクが(ほぼ)あるわけではない。

 図1は図2と全く同じチャートだが縦軸が対数目盛りになっている。これは価格の傾きが上昇率を表している。対数を使うのは100円の時の10円の変動と、100万円の時の10円の変動では重みが違うからだ。図2では天まで届きそうな上昇も、図1の上昇率で見ると意外に安定的であることが分かる。図1中の番号は昨年の主なイベントである。

 (1)は4月1日、日本の「改正資金決済法」いわゆる仮想通貨法の施行によって、ビットコインはこの時点でモノではなく資金となって、消費税がかからなくなった。また同時に仮想通貨取引所の国への「仮想通貨交換事業者」としての登録が義務付けられた。金融庁がきちんと関わってきたのだ。

 (2)は9月4日、それまで売買の中心だった中国が仮想通貨取引所の閉鎖を通達した。(3)、(4)は9月29日、今度は韓国がビットコイン取引を閉鎖。この日、日本では4月の法改正にともなって事業者11社が正式に登録された。

 中国、韓国勢の撤退後、日本の市場参加者が市場全体の約半分を超えて、日本人の投機好きだとか、バブルだとか揶揄(やゆ)されたときだが、背景には日本の法制度が整備されつつあったことも見逃せない。投資しやすくなったのだ。

 (5)の12月10日は米シカゴ・オプション取引所(CBOE)で先物の取引が始まった。CBOEは米国政府直轄機関である商品先物取引委員会(CFTC)の公認なので、ビットコインは日本とアメリカではすくなくともうさん臭い商品ではなくなったのである。

 この動きに応じて、米国では機関投資家による市場参加も期待され、ビットコインETFの組成が計画されていた。年末の市場はこれに向けて上昇してきたとも言えるだろう。ところが、こちらは今回延期になっている。これが今の下落の主因だと指摘する向きもある。

 ◆三菱UFJ信託も

 私は今のビットコインの価格がバブルなのかどうか断定することはできないが、通貨としての適正に問題があったとしても投資対象として全面否定されるようなものではないと考えている。ビットコイン自体は堅牢(けんろう)な構造を持つが管理に問題があった。

 三菱UFJ信託はビットコインを保全する仕組みを考案して、今年4月からサービスを開始するそうだ。眼を閉じてバブルに踊るのも感心しないが、さめた眼で無視を決めるのも知的な行為ではない。投資家は仕組みについてしっかり勉強してトレードではなく、投資を考えてはどうだろう。もちろん自己責任でお願いします。

                   ◇

【プロフィル】板谷敏彦

 いたや・としひこ 関西学院大経卒。内外大手証券会社を経て日本版ヘッジファンドを創設。兵庫県出身。著書は『日露戦争、資金調達の戦い』(新潮社)『日本人のための第一次世界大戦史』(毎日新聞出版)など。62歳。

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