シャープが栃木工場(栃木県矢板市)でのテレビ生産を2018年末に打ち切ると発表したのを受け、県や矢板市は情報収集に追われた。栃木工場は日本の家電産業が競争力を失うのに合わせて、段階的に生産規模を縮小してきた。自治体財政への影響もピーク時に比べれば軽微で、周辺には他産業の新工場進出もある。ただ、従業員の配置転換で地元飲食店などへの影響も懸念される。
「矢板といえばシャープ、シャープといえば矢板。工場は本市の象徴だった」。斎藤淳一郎市長は同日午後に会見し年内での生産終了を惜しんだ。市は同日、連絡調整会議を開催し離職者支援や取引先企業への影響把握を急いだ。ただ、業績悪化や度重なる事業縮小などで法人税の減収はわずかだという。
3日会見した福田富一知事は関連企業や雇用への影響を懸念した。県経済同友会の小林辰興筆頭代表理事もコメントで従業員一人ひとりに配慮した雇用の継続を求めた。
1968年に稼働した栃木工場はブラウン管テレビやビデオデッキの生産拠点としてピーク時には3000人を超す従業員が働いた。敷地面積は約33万平方メートルに及び、市は創業者にちなんで一帯の地名を早川町に変更するほど、地元との縁は深かった。ただ、近年は段階的に生産規模を縮小、従業員は700人を割っていた。従業員の自家用車で満杯だった工場周辺の駐車場は空きが目立ち、往時の活況はみられない。
取引先はテレビ生産の打ち切りにも冷静だった。液晶ディスプレーの張り合わせに使う粘着テープを納める宇都宮市の商社は「亀山工場の建設時は現地に営業所を出すほど、取引は密だった」と振り返る。業績が悪化して以降は新規の取引先開拓に努め、取引額は最盛期の10分の1に減った。「遅かれ早かれこうなると思っていた」と打ち明ける。
矢板市商工会の東泉清寿会長は「人手不足が深まるなか、雇用は地元企業でもある程度吸収できる」とみる。資生堂が大田原市に建設中の工場も受け皿になると期待する。懸念するのは飲食店や小売りなど消費への影響だ。週明けにも会員企業680社を対象に緊急アンケートを実施し、結果は市に提出して経済対策の立案に活用してもらうという。
シャープは栃木工場を物流や保守サービスの拠点として活用し、「撤退はない」と市に伝えたというが、どの程度の規模になるかなどは不透明だ。生産中止に伴う広大な遊休地について、矢板市の斎藤市長は「期限を区切って建物付きで売却を探り、買い手がつかなければ更地にしてほしい」とシャープ役員に要望したと明かした。同社と遊休地の有効活用を探る考えだ。
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