ネスレ日本が新たな成長の柱に健康分野を据える。28日、DNA検査や血液検査を無料で提供し、希望すれば自社の栄養商品を購入できるサービスを始めると発表した。顧客一人ひとりの体質や不足しがちな栄養素を教える。スマートフォンの対話アプリを通じ食習慣改善も促す。主力のコーヒーの国内市場が飽和しつつあるなか、新しい領域を開拓する。
食品会社がDNA検査や血液検査などに基づいて、一人ひとりの食生活を総合的にサポートするサービスは全国初という。DNA検査では遺伝子解析サービスのジェネシスヘルスケア(東京・渋谷)、血液検査ではハルメク・ベンチャーズ(東京・千代田)と組んだ。
新たなサービスは、栄養補給用カプセルを定期購入するサービスの特別コースへ入るのが条件。血液検査コースの例では、カプセル5種類を6カ月購入するもので約5万円。「DNAダイエット」コースでは、カプセル4種類を3カ月購入するもので約2万円となる。
食事写真を対話アプリ「LINE」で送るだけでカロリーや栄養の偏りを知らせるサービスも同時に始めた。食堂受託運営のグリーンハウス(東京・新宿)子会社が手掛ける健康管理サービス「あすけん」を活用。利用者がネスレのアカウントに画像を送ると、人工知能(AI)が自動で解析。次の献立のアドバイスももらえる。LINEではDNA検査なども一括で受け付けできる。
これまでは消費者がサプリを買う際は、自分にどの栄養素が必要か正確にはわからないまま購入することが多かった。ネスレの新サービスは、不足している栄養素がわかりやすくなる。
「国内で(家庭内の)コーヒーの杯数を伸ばすのは難しい。食品メーカーの生きる道は健康(分野)しかない」。高岡浩三社長は語気を強める。
全日本コーヒー協会(東京・中央)によるとコーヒーの国内消費量は、2016年まで4年連続で過去最高を更新してきたが、17年は2%減の46万4686トンとなった。ここ数年でコンビニエンスストアの淹れ立てコーヒーが定着したほか、スターバックスコーヒージャパン(東京・品川)がオフィスコーヒー市場に参入するなど競争も激しくなっている。
こうした現状から、高岡社長は次の成長分野を「健康市場」とみる。同社は自宅や会社で栄養補給できる飲料サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」を17年10月に本格的に始めた。開始から約半年で9万人が登録。「予想を超える反響。ニーズの表れだろう」(高岡社長)と同社も手応えを感じている。
富士経済(東京・中央)によると、健康や美容に良いとする「健康志向食品」の市場規模は拡大している。ダイエットや生活習慣病予防が市場拡大をけん引し、16年は15年比3.8%増の8884億円で、17年も2.8%増の9131億円が見込む。飲むだけの手軽なダイエットを訴求した商品が好調という。18年はさらに2%伸びて9317億円になる予測だ。
ネスレ日本はまた28日、アクサ生命保険との連携も発表した。食品会社と保険会社が連携するのは珍しい。東京・原宿のイベントに登壇したアクサ生命保険のニック・レーン最高経営責任者(CEO)は、「互いのノウハウを組み合わせた新たな商品開発などができれば」と期待を込めた。
ネスレ日本は、17年にもファンケルとの協業で商品を売り出すなど矢継ぎ早に異業種との連携を進める。「(健康は)間違いなく大きな柱になる」(高岡社長)といい、今後も連携などを検討する。ネスレといえば、コーヒー「ネスカフェ」やチョコレート菓子「キットカット」。そのイメージは急速に変わっていくかもしれない。
(沖永翔也)
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