日本航空(JAL)のLCC(ローコストキャリア)新会社設立が波紋を呼んでいる。難易度の高い中長距離路線をいきなり始めることに「無謀では」との声も上がるほどだ。競合するANAに出遅れた分を取り返すことはできるのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)
「勝算はあるのだろうか」──。あまりに唐突な展開に、社内外から疑問の声が上がっている。JALは5月、国際線中長距離LCCの新会社を設立すると発表した。成田国際空港を拠点に、ボーイングB787-8を2機使用し、2020年春から就航する。具体的な路線は未定だが、「東南アジアの航空市場は年5%で成長している。他方、欧米市場もニーズが安定的だ」(西尾忠男常務)と広範囲を見据える。
JALはこれまでLCCに対して“及び腰”だった。12年に就航したLCC、ジェットスター・ジャパン(JJP)に豪カンタス航空と共同で出資するが、契約の関係もあって主導権はカンタスが握り、「金は出しても口は出さず」という態度を続けてきた。
というのもJALは出張客をメーンターゲットに手厚いサービスを提供し、高い客単価を維持してきた。一方、LCCはサービスの簡素化や運航の工夫でコストを最小化し、低価格を売りに旅行客や若年層などの需要を開拓する。今回の新会社設立は、得意分野とは正反対の領域に挑むことになる。
それを2年未満で、しかもLCCの“基礎編”である4時間程度の短距離路線をすっ飛ばし、いきなり“応用編”である10時間前後の路線を始めるというから驚きを持って受け止められたのだ。
新LCCへの投資額は最大200億円。4月に就任したばかりの赤坂祐二社長は「遅くとも3年で黒字化させる」と言うが、収益化はそう簡単ではなく、「高いハードルが幾つもそびえ立っている」とあるJAL幹部は吐露する。
週刊ダイヤモンド
2018年6月2日号
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