2018年5月25日金曜日

トヨタ、新興国開拓に本腰 インドからアフリカに車供給

 トヨタ自動車スズキは25日、小~中型車の生産や開発、市場開拓などの分野で新たに共同事業を始める協議をすることで合意したと発表した。小型高効率のエンジン開発などでトヨタが強みを持つハイブリッド車(HV)の技術支援をするほか、両社でインドからアフリカ市場に車を供給することなどが柱となる。

 トヨタは2017年2月にスズキと提携に向けた覚書を結んで以降、インドなど新興国戦略を練ってきた。両社のタッグは徐々に具体化しアフリカ攻略も視野に入ってきた。

 今回新たに共同で進めるのは(1)スズキ開発の小型高効率エンジンなどの基幹部品にトヨタとデンソーが技術支援する(2)スズキ開発車両をトヨタのインド工場「トヨタキルロスカ自動車」(バンガロール市)で生産し、トヨタ、スズキ両社のブランドでインドで販売する(3)スズキ開発車を両社でアフリカ市場に供給し、物流やサービスで協業しながら販売する、の3点だ。

 技術支援ではトヨタが強いHVのシステムを提供しスズキの小型車などに搭載していく。トヨタとスズキはインドでの規制強化で、将来的な電気自動車(EV)が普及することを見据えて、すでにスズキからEV供給を受けることにしているが、燃費規制に有効なHVも同時に展開していく。スズキにとってもより燃費効率のよいHVシステムは必須だった。

 両社は3月、19年春にもインドで車両の相互OEM(相手先ブランドによる生産)供給を始めると発表。トヨタのインド工場の稼働率は5割程度にとどまっており、スズキが開発した車両の生産をすることで、稼働率の底上げにもつながる。

 トヨタにとって今回のスズキとの提携は出遅れが指摘されていた新興国開拓に本腰を入れる狙いがある。トヨタはタイで約3割のトップシェアを握るなど東南アジアでは強いが、それ以外の新興国では存在感が大きくはないのが実情だ。巨大市場となったインドでは主流となる低価格の小型車が弱かったためシェアは3%程度にとどまっており、出遅れが目立っていた。

 スズキとのタッグで自動車市場で「最後のフロンティア」ともいわれるアフリカ市場を狙う姿勢を鮮明にしたことも見逃せない。トヨタは最大市場の南アフリカ共和国を筆頭に、サハラ砂漠以南の「サブサハラ」と呼ばれる国々の大半でトップシェアを持つ。

 1950年代から大型SUV「ランドクルーザー」などを輸出し始めるなど、早くから事業を展開して、販売店網などを整備してきた。交通インフラが十分に整備されていないアフリカにあって「壊れにくい」との口コミが広がって人気を得た。

 現在は政府や企業が主な購買層で、SUVなどの大型車が売れ筋だが、今後は一般消費者にも需要が拡大することが予測されており、普及車をいかに拡充するかが課題。アフリカでは中国やインド、韓国勢も進出し競争も激化していた。

 アフリカは25年に人口が50億人となり中国を超える規模への拡大が見込まれる。今後、車の普及期を迎える中、いかにマーケットリーダーの地位を守れるかはトヨタの成長力を左右しうる。

 今回の新たな取り組みを巡って、トヨタの豊田章男社長はスズキとの連携で「自ら創造する未来を選んだ。スズキの『やらまいか』の精神を学びたい」とした。スズキの鈴木修会長も「これから世界市場で両社のさらなる成功を目指す」とコメントした。

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