ファミリーマートは21日、民泊仲介世界最大手の米エアビーアンドビーと提携し店頭を鍵の受け渡し拠点にすると発表した。6月の住宅宿泊事業法(民泊法)施行を控え物件の届け出件数は低調だが、民泊市場は中長期的には成長が期待できる。本人確認など新法への対応が課題となっている民泊と、訪日客需要を伸ばしたいコンビニ。「相思相愛」の両者が急接近している。
「エアビーはグローバルに顧客を抱える。利用者に来店してもらい商品を買ってもらえるといい」。ファミマの沢田貴司社長は同日都内で開いた記者会見で強調した。セブン―イレブン・ジャパンとローソンに続き、コンビニエンスストア大手3社による民泊関連のサービスが出そろった。
ファミマは2018年度中に東京都心などの約150店に鍵の受け渡しボックスを設置。エアビーに登録する物件の家主と旅行者が使える。新法で求められるパスポートの提示などの本人確認も店頭のタブレットでできるようにする。
民泊利用者は鍵の受け取りと返却で最低2回は来店する。ファミマはクーポンを配信し、食品や日用品などのついで買いを誘う。交通機関のチケット販売や今後一部店舗で併設するコインランドリーの利用などとの相乗効果も期待する。
提携はファミマが持ちかけたが、エアビーにとって願ってもない相手だった。これまでは家主が直接鍵を手渡したり、郵便受けにしまって管理したりするケースが多かった。利用者だけに教えるパスワードで開ける鍵もあるが、普及は道半ば。コンビニを鍵の受け渡し拠点として活用できれば、利用者だけでなく家主の安心感につながる。
エアビーには危機感もある。14年に日本法人を設けたエアビーは国内の約6万2千件を掲載。ただ現行ルールの許可がない施設が多く、6月以降は新法に従い表示しない方針。掲載施設数は大きく減る可能性がある。
手続きの煩雑さや自治体の規制を嫌い廃業する家主が増えていることや、新規参入組の楽天など民泊仲介のライバル増加も逆風だ。
観光庁によると新法に基づく自治体への民泊物件の届け出件数は5月11日時点で724件のみ。ただ1~3月は訪日客の11.6%が民泊を利用するなど需要は根強い。エアビー日本法人の田辺泰之代表は「手続き中の家主も多くサポートしたい」と語る。
民泊が先行して普及した欧米でも店舗や喫茶店で鍵を受け渡しするケースはあった。ただエアビーが全国に店舗を持つ大手と大々的に組むのは日本が初めて。日本でもホテルのフロントや荷物預かり所に鍵の受け渡しを委託する民泊もあるが、コンビニが新たなインフラになりつつある。
セブン―イレブンは6月、JTBと共同で店舗にチェックイン専用機を設ける。本人確認や鍵の受け渡しができ、20年度までに全国1000店に広げる。ローソンは1月から順次、店内に鍵の保管ボックスを設けた。鍵の受け渡し拠点を設けるスタートアップ企業、キーカフェ(本社カナダ・バンクーバー)の日本法人と組む。18年度末までに都市部中心に100店に広げる。
来店客数の減少が続く中、コンビニ各社にとり訪日客の取り込みは課題だ。特に民泊を利用する訪日外国人は滞在日数が長い傾向にあり、集客できれば売り上げ増が期待できる。
一方の民泊側にとっても防犯カメラや店員など周囲の目があるコンビニでのチェックインは不正利用を防ぐ効果も期待できる。民泊とコンビニの提携が新サービスの開発などにつながる可能性が広がっている。(大林広樹、今井拓也)
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